Photo by Yuhei Iwamoto
米電子決済大手のStripe(ストライプ)がAIによる買い物代行の「エージェンティックコマース」に本腰を入れる。9月末に都内で開催した年次イベントでは、共同創業者兼プレジデントのジョン・コリソン氏が登壇。Metaの参入などでにわかに盛り上がるエージェンティックコマースの現状を語った。長期連載『スタートアップ最前線』の本稿では、イベントの様子と、メディア向けラウンドテーブルでのコリソン氏の一問一答の内容をお届けする。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)
「相談相手」から「購買の代行者」へ
Stripeが次に狙う巨大市場「AI買い物代行」とは?
「経済はAIを中心に再定義されつつあります。すでに消費者はAIに『何を買うべきか』と尋ねています。しかし今や、それらのAIは自ら行動し始めています」
これまで相談相手だったAIが、自ら取引を行い始めた――。米電子決済大手のStripe(ストライプ)の共同創業者兼プレジデントのジョン・コリソン氏は、9月30日に開催した年次イベント「Stripe Tour Tokyo 2026」の冒頭、聴衆に向けてこう語り始めた。
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが消費者に代わって、商品の検索や比較から決済までを手掛ける、新しいかたちのオンラインショッピングのことだ。その定義や対象範囲にもよるが、米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーでは「2030年に世界3兆~5兆ドル(消費者向け物販)」、米調査会社のGartnerは「28年に世界15兆ドル(企業間取引)」とその市場規模を予測する。
9月には米MetaがAIエージェント「Muse」を発表。そのアプリにエージェンティックコマースの機能を導入したことで、業界関係者の注目が高まった。
Stripeは10年、パトリックとジョンのコリソン兄弟が創業した。その評価額は26年2月時点で1590億ドル(約25兆円)、同社のサービスを利用する企業は世界500万社以上。25年の取引総額は1.9兆ドル(約300兆円)に上り、これは世界のGDPの約1.6%に相当する。サービス開始からは10年を迎えた日本国内では、トヨタ自動車やソニーなどの大手からスタートアップまで、15万社以上が利用する。
企業向けの決済サービスの地位を築いた同社が次に狙うのがAIによる取引の領域だ。8月には、AIのトークン使用量管理のスタートアップ・OpenRouterを買収。金額は非公開だが、米メディア・Axiosの報道によると、80億ドル(約1兆2700億円)以上に上るという。また、前述のMuseにも、Stripeが提供する決済サービスの「Link」が採用されるなど、着々とAI時代に向けた布石を打ってきた。
だが、日本でエージェンティックコマースが本格化するまでには、まだ時間がかかりそうだ。現状は楽天やLINEヤフーなどが展開するECモールにおいてAIを活用した商品提案機能などを導入するが、AIエージェントが直接購買行動を完結させるまでには至らない。
MetaのMuseも日本での展開は未定だ。また直近では、米OpenAIが訓練中のAIエージェントが試験環境を抜け出し、米Hugging Faceのシステムに不正侵入した件をはじめとして、AIエージェントの「暴走」にまつわる事件も続き、国内外共にAI自体を不安視する声も少なくない。
Stripeの創業者は決済の未来やAIのリスクをどう見ているのか。次ページでは、コリソン氏がメディア向けのラウンドテーブルで語った内容を紹介する。







