スタートアップ最前線Photo:PIXTA

日本取引所グループが、未上場スタートアップへ投資するコーポレート・ベンチャーキャピタル事業を開始することがダイヤモンド編集部の取材で分かった。高市政権が掲げる「戦略17分野」への官民投資が加速する中、デジタル事業を担うJPX総研が中心となり外部人材を招聘。事業シナジーを想定してスタートアップと組むとしているが、外部には「利益相反だ」との皮肉の声もある。長期連載『スタートアップ最前線』の本稿で、JPX内部で進行中の事業計画と課題を明らかにする。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)

「戦略17分野」公表で激変する投資環境
スタートアップ投資は「経済の本流」へ

 高市政権で重点投資対象と位置付ける「戦略17分野」が2025年11月に発表されて以降、スタートアップの投資を巡る環境は新たなフェーズに突入した。

 政府は3月10日の日本成長戦略会議で、この17分野において、先行して投資を検討する「製品・技術27品目」を公表。また、その実現に向けた「官民投資ロードマップ」の素案を発表した。

 ベンチャーキャピタル(VC)を中心とするスタートアップ投資の担い手は、この17分野に含まれるフィジカルAIや無人航空機、フュージョンエネルギーなど、地政学リスクも見据えてデュアルユース(民間・軍事双方に利用可能な技術や製品・サービス)可能な領域に急激に目線を変えつつある。ロードマップの公表が裏付けるように、そこに「カネの流れ」が明確にあることが、VCたちの戦略転換を促している。

 岸田政権時代の22年11月に掲げられた「スタートアップ育成5カ年計画」も折り返し地点を過ぎた。東証グロース市場の上場維持基準変更などで出口難となるスタートアップ企業もあるが、ここに来てスタートアップ投資が国家の経済戦略そのものへと接続されつつある。

 東京証券取引所などを運営し、日本の資本市場の「番人」ともいえる日本取引所グループ(JPX)も、こうした歴史的な転換点の流れに乗りたいようだ。

 だが、なぜ自らリスクマネーの供給側へと回るのか。次ページでは、新設されるCVCチームの内実と、グループ内外から上がる「期待と懸念」の正体を詳報する。