Photo by Yuhei Iwamoto
高市政権が成長戦略の柱に掲げる「戦略17分野」や第2期AI基本計画において、官民集中投資の最重点領域に指定された「バーティカルAI(産業特化型AI)」。その中核として脚光を浴びるスタートアップ・キャディが、シリーズDで177億円の資金調達を実施した。評価額は1820億円に達し、いわゆる「ユニコーン企業(設立10年以内で評価額10億ドル以上の未上場企業)」の仲間入りを果たした。長期連載『スタートアップ最前線』の本稿では、現在、海外市場の開拓に向けて米国で指揮を執る代表取締役CEOの加藤勇志郎氏に、国策投資の波を捉える事業戦略と世界制覇への勝算を聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)
受発注から撤退、製造業AIデータ基盤へ
評価額1820億円、新生ユニコーンの素顔
キャディは2017年創業のスタートアップだ。マッキンゼー・アンド・カンパニーで製造業を担当した加藤勇志郎CEO(最高経営責任者)とアップル米国本社でiPhoneやAirPodsなどの製品開発を経験した小橋昭文・取締役CTO(最高技術責任者)が共同創業した。
創業時には、製造業向けに特注部品の受発注のマッチング事業を展開していたが、24年には事業からの撤退を発表。データ解析や業務アプリといったソフトウエア事業へと軸足を移した。現在提供中の製品群である「製造業AIデータプラットフォームCADDi」では、3Dや2Dの図面データをはじめ、ドキュメントや画像、音声など、製造業で利用するさまざまなデータを解析し、管理する基盤を構築。そのデータを活用したアプリケーションや、AIエージェントを提供する。
売り上げ規模は非公開だが、デンソーやSUBARUなど、日経225構成銘柄のうち組み立て加工型(ディスクリート系)製造業の半数以上が製品を導入。また米国のほかタイやベトナムにも拠点を置き、海外22カ国で事業を展開する。加藤CEO自身も生活拠点を米国に移し、自ら海外市場の開拓を進めている(その様子はYouTubeの「ダイヤモンド公式チャンネル」でも紹介している)。
かとう・ゆうしろう/1991年生まれ。神奈川県出身。東京大学経済学部卒業後、2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。16年マネジャー。17年に取締役CTOの小橋昭文氏と共にキャディを創業し現職。 Photo by Y.I.
今回の資金調達では、新規投資家として米国のベンチャーキャピタル(VC)であるMoore Strategic Venturesのほか、新興独立系VCのCoreline Ventures、トヨタ自動車のコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)であるWoven Capital、その他2社が参画。既存投資家である英Atomico、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ゆうちょアセットマネジメントも継続して出資した。
かつて別のVCで創業期のキャディへ投資し、その後共同創業したVC・Coreline Venturesであらためてキャディへ投資したベンチャーキャピタリストの原健一郎氏は「製造業特有の非構造化データの扱いに強みを持つ企業。米国でも先行するビジネスモデルが存在しない」と評価する。米国の有力データ分析企業であるPalantir TechnologiesやDatabricksを引き合いに、1820億円という評価額について「成長率からすれば妥当だ」と強調する。
先行する国内ユニコーン企業と並び、一気に日本トップクラスの評価額が付いたキャディ。日米の投資家が熱視線を送る会社の現状を加藤CEOはどう考えるのか。次ページで一問一答を掲載する。







