北京の地下鉄が便利に
料金は5元から2元へ

 私が北京に留学した当初の2003年、北京大学から国貿という北京で最も発展している場所のひとつで、多くの日本企業がオフィスを構えるCBD(Central Beijing District)まで地下鉄で行くのには約1時間半を要した。

 私が住んでいた北京大学留学生宿舎――勺園(西門付近)から同大学東門まで行くのに10分、そこから韓国人エリアと言われるほど韓国人が多く活動している五道口にある五道口駅(13号線)まで徒歩で15分、西直門駅まで10分(3駅)、そこから2号線に乗り換えて建国門駅まで20分(8駅)、そこから1号線に乗り換えて2駅行くと国貿に到着する(5分)。

 上に挙げた時間を足せば60分だが、地下鉄の乗り換えや待ち時間などを含めると、だいたい90分かかった。当時の料金は5元(80円)。

 今となっては、北京大学東門駅(4号線)が建設され、だいぶ便利になった。北京大学生は市街地まで繰り出すのに五道口まで徒歩やバスで赴く必要がなくなった。4号線と、これまた2003年時にはなかった地下鉄10号線を乗り継いで、乗換1回で国貿まで行けるようになった。所要時間は70分。料金は2元(32円)だ。

 時間が約20分短縮されたのは、インフラが整備された証拠だ。この期間、北京では五輪が開催され、格差の拡大や福祉の欠如、官僚の腐敗など、さまざまな問題を抱えながらも高度経済成長を続ける社会主義国家の首都は年々“お色直し”をしていった。

 一方で、空気の“お色直し”はなされなかった。そのなかを毎日走っていた私の肺は、一体どんなふうになっているのだろうか。時々そんなふうに考える。

 近年における北京の地下鉄事情を長々と紹介したのには理由がある。読者の皆さん、どこか気になる点はないだろうか。疑問に感じてしまった部分はないだろうか。

 そう、同じ区間の移動に、インフラが整備されたおかげで時間が短縮され、都市生活がより効率化されたにもかかわらず、料金が半額以下に下がったことである。