後ドア後方に設けられた小窓。内張が運転席から見やすいように切られ、ガラスには熱線が入っていた。販売の大勢に影響はないのに必要と思えば凝るあたり、日産スピリットの復活を感じた Photo by K.I.
最近のクルマは、カメラやソナーを用いた安全装置が普及したことで、後方視界が疎かにされる傾向がある。斜め後方視界はその最たるもので、太いCピラーが丸ごと死角になってしまうクルマも多い。また、小窓があるモデルは採光が目的で、視界の確保には役に立たないのが多数派だ。
そんな中で、見える小窓をしっかり設けているのは偉いなと思った。よく見ると、そのガラスに曇り除去のための熱線が入っているではないか。ドライブのリスクを極限まで小さくしようという熱意が、ひしひしと伝わってきた。
一事が万事。キックスは、アクセルペダルを踏んだ加速感の作り方、ステアリングを切った時の自然さ、スイッチ類の適切な配置、乗員をリラックスさせる採光性、大音量にせずともオーディオを楽しめるサラウンドの作り込みなど、ドライブを楽しむユーザーのことを考え抜いたという痕跡が随所に見受けられた。
日産らしさといえば走り、電動化、先進運転支援システムなどの技術をもって語られがちだ。しかし、実用に即してクルマを作り込む熱意こそが、日産本来の持ち味ではなかろうか。そのパワーがあるからこそ、ユーザーを感服させる技術を次から次へと生み出せていたのだ。
キックスはスポーツカーのようなクルマではないが、こういうクルマ作りであれば、少なくとも旧来の日産ファンは「これでこそ日産!」と思うに違いない。
日産のクルマ作りは別にダメになっていたというわけではない。旧型キックスのように凡庸なのが多すぎたのは事実だが、良いクルマもそれなりに出していた。







