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元週刊ダイヤモンド編集長が高校生向けに実施している授業「大学への経済学入門」を基にした連載『経済学タイムトラベル 歴史を動かした経済思想家たちの軌跡』。第15回はアダム・スミス(1723~90)の2回目です。スミスはケネーら重農主義学派のエコノミストとパリで議論し、帰国の翌年から『国富論』の執筆を始めました。政府が関税政策を駆使して貿易黒字を蓄積し、外国の金銀を収奪してでも自国に蓄積する政策を重商主義(mercantile system)と名付けて徹底的に批判するのが『国富論』ですが、同様に重商主義を批判して自由主義の貿易政策を唱道する重農主義(agricultural system)も批判しています。今日のゼミは、大作の『国富論』をひもときながら、重農主義への共感と批判を説くスミスの思考をたどってみます。
アダム・スミスの『国富論』は
中公文庫版がオススメの理由とは?
みなさん、私が中公文庫版の『国富論』を参照し、推奨している理由がわかりましたか?C君、すぐにわかったでしょ。
生徒C:わかりました!中公文庫には「小見出し」があるんです。しかも、単なる見出しではなくて、そのブロックの主題をまとめ、本文を理解しやすくしています。
そのとおりです。「小見出し」を挿入している『国富論』は中公文庫だけです。ふつう、書籍の文中の見出しは編集者が適宜入れることが多いですが、専門書の翻訳の際、原書に見出しがない場合、訳書に見出しを入れることはないでしょう。段落も原書通りにすることが多いです。中公文庫の場合、訳者が凡例で「小見出し」の趣旨を記載しています。「小見出し」は翻訳・編集のポイントなんですね。
生徒C:見出しはすぐにわかりましたが、凡例で説明されていることまでは気が付きませんでした。
凡例の項目にこうあります。「本文の段落の適当な箇所に『小見出し』を附したが、これはスミスの原典にはなく(中略)、各訳者が原典の内容に即して、いくつかのパラグラフを通じての内容の要点ならびに問題点を簡潔に表示しようとしたものである。読者はこの『小見出し』を手がかりにして、その箇所でスミスが何を語ろうとしていたのかを理解することができよう。なお、読者の便宜のために、全巻の『小見出し』を一括し第Ⅲ巻巻末に収めた」。
生徒E:なるほど、最終巻の巻末に「小見出し」の一覧まであるんですね!
そうです。重農主義を取り上げた第4篇第9章(★注1)の「小見出し」をたどりながらいっしょに考えてみましょう。「小見出し」を読むだけで本文のポイントをつかめます。なお、引用するのは「小見出し」全部ではなくて抜粋で、●を記しました。
●「重農主義は都市の商工業を偏重するコルベールの重商主義にたいする批判として生れ、農業こそが一国の所得と富の源泉だと主張した」(『国富論』第4篇第9章の小見出し、以下同)
コルベールは17世紀、ルイ14世時代の財務総監で、インド支配を目指す東インド会社を再建し、アメリカ大陸との植民地貿易を独占する西インド会社を創設しました。この時代の莫大な利益によってルイ14世はヴェルサイユ宮殿を建設したのです。
生徒B:すると100年後にヴェルサイユ宮殿の中で、ケネーが主導する重農学派はコルベールの重商主義を批判していたことになります。







