元の研究を1975年に発表したレイサム氏とバルデス氏によれば、同じ輸送能力の増加をトラックの追加購入で実現するには、25万ドルが必要だったという。会社の会計に基づく試算だ。仕事への応用を考えるなら、運転手の熱意を尋ねる前に、荷台にどれだけ積めているかを確かめるところから始めるべきだ。

 未知の複雑な仕事では、達成する数字ばかりを急がせると、必要な知識の習得を妨げる。論文はその問題も扱い、有効な方法を見つけるなど、学ぶ内容を具体化した目標の効果を示している。研究を根拠にするなら、部下が方法を知らないまま、高いノルマだけを課す指導は認められない。

「精いっぱいやれ」で仕事を丸投げする管理職は、この点を自分の仕事として考えるべきだ。何ができるようになればよいかを示さず、提出されたものを見てから違うと言う。それでは部下は、上司の好みを当てるために働くしかない。何度もやり直させた末に、本人の理解力のせいにするのは無責任だ。

 もっとも、目標を明確にすれば、それで十分というわけではない。どこまで高い水準を目指すのかも問われる。

稲盛和夫がダメ出しした
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 京セラ創業者の稲盛和夫氏は、経営者にもっと厳しい基準を突きつけた。2012年の講話要旨には、努力をしているかと尋ねると、多くの経営者から同じ答えが返ってくるとある。

「自分なりに努力をしています」

 これに対して、稲盛氏が求めたのは「誰にも負けない努力」だった。競合企業がそれ以上に努力すれば、競争には敗れる。自分の仕事ぶりに満足したところで、相手が手を緩めてくれるわけではない。

 豊田氏は今のやり方に満足せず、さらに改善することの大切さを説き、稲盛氏は競争相手を上回る努力を求めた。ふたりに共通するのは、自分が十分にやったと思うだけで満足してはいけないという考え方だ。

 自分の満足で終わる「自分なりの努力」。これこそが、仕事で「絶対にやってはいけない努力」ではないだろうか。

 独自のやり方を考える自由は大切だ。その工夫が有効だったかを確かめるときには、社外の数字や他人の指摘も受け入れる必要がある。昨日より早く仕事が終わったという報告なら、改善として評価すればよい。競争に勝つには、そこから先に、顧客が求める速さまで届いたかという確認が残る。