部下を叱る前に
上司こそ見直すべきこととは?

 稲盛氏がこの言葉を向けた相手は、経営者だ。その点は外せない。部下を叱るために名経営者の言葉を借りる前に、経営者自身の仕事を点検すべきである。

 顧客が何を求めているかを調べ、競合より劣る部分に人や資金を回す。自社で改めるべき仕事があるのに、社員の気合だけを問題にするのは怠慢だ。

稲盛和夫京セラやKDDIを創業し、日本航空(JAL)の再建に尽力した稲盛和夫氏 Photo:Koichi Kamoshida/gettyimages

 稲盛氏は「経営12カ条」で、具体的な目標を立て、社員と共有するよう求めている。年間の目標に加え、月ごとの目標も設定する。社員が何をすべきかを理解できるところまで、経営者の仕事が続く。

 豊田氏もNGワードを語った大会で、上司との相談を仕事の最初に行い、目的や方向性を確認する大切さを説いていた。社長の意図が担当者まで伝わらず、本人が懸命に考えたものを最後に否定される状況を問題にしていたのである。

 指示した側が何を求めているか、担当者が何に困っているか。最初に話しておけば済むことを省き、最後のやり直しで埋め合わせる。そんな仕事のさせ方で、部下の努力を語る資格はない。指示を出す人の確認不足に、部下の時間を使わせているだけだ。

 部下が資料を何度も作り直しているなら、上司も自分の説明を振り返るべきだ。誰が何を決めるための資料かを伝えたか。途中の相談で、どこを直せばよいかを示したか。頼んだときは「任せる」と言い、最後に自分の好みを持ち出すようでは困る。

 部下の「自分なりに努力した」を認めないなら、上司の「自分なりに説明した」も通らないことになる。努力とは大変なものだ。