相手の文化や価値観を尊重し、理解していくこと

 しっかりと言語化し、確認を取り合うことは、「暗黙の了解」に寄りかかってしまいがちな日本人同士のコミュニケーションにおいても大切だろう。

 これまで、島田教授は、言語教育や異文化コミュニケーションの観点から、外国人の就労について実証的な研究を重ねてきた。その過程で、外国人に対して必要なのは「異文化コミュニケーション支援」だとわかった。

島田 日本に就職した外国人社員が上司から受けている支援やフィードバックのなかに、外国人ならではの興味深い事例がいくつもありました。それは、個人の問題だけではなく、文化的な要因も関係していることがわかりました。新入社員に対しては上司の支援が最も重要ですが、外国人の場合は、さらに、「異文化コミュニケーション支援」の必要があるのです。

「異文化コミュニケーション支援」は、3つに分類できます。

 1つは、「相手文化理解支援」です。対応や行動で違和感を覚えることがあっても、頭ごなしに否定せず、「その人が生きてきた社会では普通のことかもしれない」と、自分の持っている前提を一度疑ってみること。外国籍のスタッフを多く抱える企業での事例ですが、カップルで応募してきたベトナム人二人が、気がつくといつも一緒にいるので、試しに二人を同じ持ち場に配置したところ、協力して業務を行うことで仕事の効率が上がったそうなのです(笑)。それは、日本では公私混同とみなされ、なかなか認められないことですが……このケースのように、一見日本ではあり得ないと思われることでも、相手の国の文化や価値観を尊重し、仕事の効率アップにつながる方法を柔軟に検討する姿勢も時には大切ではないでしょうか。

 異文化コミュニケーション支援の2つめとして、日本の文化を知ってもらう「日本文化説明支援」も必要です。日本人なら当たり前に思えるようなことやルールでも、「なぜ、そうなのか?」「何のために、そうするのか」、背景や目的を明確にわかりやすく説明することが相手に対する支援につながります。日本人がよく使う「臨機応変に」は、外国人社員には通じないと考えた方がよいでしょう。行動の背景や目的を明確にすることで、イレギュラーな事態が起きても自律的に行動できるようになります。

 3つめは、「異文化内省支援」です。説明するだけでなく、次に同じような状況になったとき、「どうすべきなのか」を考えさせ、本人に答えを導き出させることです。また、外国人社員にフィードバックする際には、達成目標を明確に示し、高い基準と高い期待を伝えたうえで、本人が自分で判断して動いてよい範囲をしっかり伝えると、安心して自律的に行動できるようになります。

 上司がこのような支援をすることで、外国人社員は働きやすくなり、大きく成長していくでしょう。結果的に、外国人社員の突然の離職といった事態を回避でき、職場への定着が期待できるでしょう。将来的には、管理職として組織の未来に貢献する人材としての活躍も期待できるのではないでしょうか。

「相手文化理解支援」「日本文化説明支援」「異文化内省支援」は、外国人に限らず、シニアや女性、子育て中の社員など、職場における「非典型的な人材=マイノリティの人々」に対しても当てはまるものだと、島田教授は説く。

島田 職場には、外見から誰にでもわかりやすいマイノリティの方もいれば、目に見えにくいマイノリティの方もいます。人に言えない事情を抱えている方もいるでしょう。同僚には気づかれたくないようなことも、上司が理解し、その人に負担がかからないように配慮することも必要でしょう。しかし、同時に過度な配慮からその方の挑戦や活躍の機会を奪わないことも同じくらい大切です。

 私自身は、自分とは異なる背景の人と一緒に働いていると、想像もできないような経験を得られると感じることが多いです。それは楽しいですし、仕事をするうえでのクリエイティビティ、価値創造にもつながっていきます。