砂まみれになって、思い切り転ぶことも大切

 多様な人材のなかには、新卒社員をはじめ、若い世代も含まれる。上司やマネジャーが彼ら彼女らに対して行うべき適切な支援はどのようなものか?

島田 社会人としての最初の時期に、失敗しても安心して転べる「砂場」のような環境をつくってあげるとよいと思います。砂まみれになって思い切り転ぶことができると、その人の持っている可能性をつぶすことなく、組織にも活かせていけるのではないでしょうか。多様な個性を持つ若い世代の可能性をつぶさないよう、私も教員として気を配っています。

 そして、教員も、上司や管理職も、高みの見物をするのではなく、一緒に砂まみれになりながら、同じ目線で寄り添ってあげることが大切です。

 なかには、反抗的な新入社員もいるかもしれません。そうした人を遠ざけるのではなく、「どうして、そんなことを言うのだろう?」と、とことん近づいていってみるのも手だと思います。相手に何を言われても、自分は良質な「サンドバッグ」になったと割り切って、打たれてみるのです。新入社員は、サンドバッグになってくれた相手のことをずっと覚えているもの。反抗的な若い人ほど、何かの力を秘めていて、将来、思いがけない成長を見せてくれるかもしれません。サンドバッグは、相手を強くするためのものですから(笑)。

 現在、島田教授が接している学生たちは、企業における未来の新入社員だ。先輩社員や上司は、「AIを当たり前に使う」彼ら彼女らと、どう向き合っていけばいいのだろう?

島田 いまの学生は、概して、とても素直な印象を受けます。教員が与えた課題に真面目に取り組むし、プレゼンテーションの機会もたくさんあるので、教員の私よりもスライド作成が上手だったりします。その反面、卒論やレポートはAIに頼り、この先、自分の頭で考えたり、文章の内容を要約したりできるのか、心配でもあります。

 昨年、私のゼミでは、AIをあえて使わない課題に取り組むことにしました。テーマは、キャンパスを舞台にした「謎解きづくり」です。いくつもの謎がどうつながっていくのか、謎を解くためのストーリーを組み立てる必要があるので、しっかりと話し合いをしないと先に進みません。みんなが真剣にディスカッションをして、かつてないほど学生間のコミュニケーションが活発に行われました。私は、今後も、考える力を育成できるようなアクティビティを考えていきたいと思っています。

 企業の場合は、教育の現場とは違って、仕事で成果を出すことがゴールですから、AIは、そのためのツールだと割り切って活用していけばよいでしょう。ただ、頼りすぎると、やはり、思考する力が落ちてしまいます。車に乗れば楽だけれど、コツコツと筋トレを続けていれば筋肉が鍛えられ、健康が保てる。それと同じです。長い時間をかけて積み上げてきたスキルほど、賞味期間も長いもの。新入社員が、そうしたスキルを育てていけるといいですね。