私たちは、目の前にある情報だけで素早く判断を下し、見えていない情報の存在を考慮しにくい傾向があります。

 この傾向を彼は「WYSIATI(What you see is all there is)」、つまり「見えているものがすべてだ」という錯覚と呼びました。

制約や禁止事項を
先に明示するメリット

 これはAIの出力を評価する場面でも働きます。

 返ってきた文章が整っていてそれらしく見えると、内容を深く検討しないまま「良い出力だ」と判断してしまいがちです。

 さらに同じ錯覚が依頼をつくる段階にも影響し、「何を伝えたいか」という自分の頭の中にある情報だけを見て、「何を避けさせるべきか」という情報を伝え忘れてしまいます。

 制約や禁止事項を先に明示することには、次の2つの効果があります。

(1)AIの出力の探索範囲を適切に絞り込み、期待に近い結果を得やすくする
(2)依頼を書く人間自身が「自分は本当に何を求めていて、何を避けたいのか」を整理する機会になる

 このプロセス自体が、依頼の質を上げる思考トレーニングになるのです。

期待ハズレの答えを修正、修正…AIを使ったのに「仕事が遅くなる人」が伝え忘れている“一言”出典:『頭のいい人が習慣にしている学び方の戦略』
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 昨日と同じ依頼をしたのに、今日は全然違う答えがきた。同じような内容なのに、質がバラバラだった。

 このようにAIの出力がぶれる原因はいくつかありますが、そのひとつは依頼の構造が毎回違うことにあります。

 ミシガン大学のレイノルズとKNCニューラル・カリキュラスのマクドネルは、大規模言語モデルへの指示の設計(つまりプロンプトのつくり方)が、出力の品質や性質を大きく左右することを示しました。

 彼らの研究が明らかにしたのは、AIに「少数の例を見せて真似させる」より、「タスクそのものを自然な言葉で直接指定する」ほうが優れた結果を生む場合があるという事実です。そしてより根本的な示唆として、「プロンプト」はAIに新しいことを教える手段ではなく、AIがすでに持っている能力を引き出すための「呼び出し信号」として機能するという考え方を提案しました。

 この見方に立つと、プロンプトの構造を整えることは、AIの能力を安定して引き出すために欠かせない作業です。