影響(3):それでも残るトランプ関税リスク
対外政策への傾斜と同盟国への圧力再燃の恐れ
トランプ政権が思い描く米国に修正がかかる中で、今後も不確実性として残り続けるのが「トランプ関税」のリスクである。
中間選挙で大敗したトランプ政権にとって、議会の協力を必要とする減税の恒久化や大規模な歳出法案、規制緩和の法制化といった内政課題を思い通りに進めることは極めて困難となった。その結果、トランプ大統領が残り2年の任期で自身のレガシー(政治的遺産)を誇示するため、議会の承認を必要とせず大統領権限を行使しやすい外交・通商政策へ傾斜する恐れが強い。
トランプ氏にとって、関税は他国からの巨額の対米直接投資や通商上の譲歩を引き出すための最も有効な交渉カードであり、成功体験として刷り込まれている。今年前半に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税が違法判決を受けて取り下げられた後も、通商法122条関税を経て、足元では通商法301条に基づき、他国の「強制労働」や「過剰生産能力」を問題視した新たな関税措置の構築が進められている。
対中関係においては、中国に依存したサプライチェーンの立て直しに時間を要する現実や重要鉱物(レアアース)の供給制約を踏まえ、当面は大規模な衝突を避けて関係を管理する「長期戦」がメインシナリオとなっている。しかし、今後のディール次第では、301条過剰生産能力調査の完了を契機に対中関税率が再び大幅に引き上げられるリスクは排除できない。
さらに警戒すべきは、日本や欧州など同盟国への飛び火である。第2次政権発足以降、トランプ関税の脅威を背景に対米投資計画の策定を迫られてきた主要国は、今後その投資の進捗状況を厳しく吟味される局面に入る。米国の貿易赤字削減や国内雇用の創出が政権の期待通りに進んでいないと判断されれば、トランプ氏が再び同盟国に対して関税発動をちらつかせて圧力を強めるシナリオが現実味を帯びる。
大統領と議会多数派の政党が異なる分割政府となり内政の膠着が避けられない中、大統領権限に基づき繰り出される通商圧力は、AI関連投資の減速リスクと並び、米国および世界各国の産業界にとって引き続き最大の警戒要因であり続けるだろう。
(伊藤忠総研上席主任研究員 高橋尚太郎)







