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「愛と執着心で人がほしがっているものをつくる」(株式会社Zaim代表・閑歳孝子)――古川享が聞き出す今を駆けるスマート・ウーマンの本音

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第14回】 2013年8月22日
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古川:知恵袋的な会社があっていいように思います。できないと思っているのは、自分がすべてやらないといけないと思うからです。フィンランドのノキアで、賢い人を集めて研究所でつくるのをやめ、リビング・ラボという試みが行われています。技術者がこれ見よがしにものをつくっても、機能の半分も使われません。プロトタイプをまずは荒削りでつくり、6000人のヘルシンキ近郊の子どもや老人に使ってもらい、意見を吸い上げながら改良する、という考え方です。

 閑歳さんのものづくりの基本が、それに近いと感じます。自分自身が欲しかったり、周りが欲しているのをつくる――そこからスタートする。当たり前ですが、そういう発想がものづくりの基本で、女性がもっとエンジニアリングに入ってくれたらいいと思います。

閑歳:執着心はある方だと思います。何回も挫折しそうになりましたが、使ってくれる人がいたからこそ、続けられましたし、もっとよいものが作れるのではないかと思ってます。それを一言で言うと愛なのかもしれません。

古川:人に愛されるもの、人に使われて喜ばれるものをつくる、いいですね。マイクロソフトにゴードン・ベルという優秀な研究者がいるのですが、ビル・ゲイツは彼のためにBARC(Bay Area Research Center)という研究所をサンフランシスコのダウンタウンにつくりました。彼に好きなことをやってもらうことが目的で、今やっているのは、「MyLifeBits」(マイライフビッツ)というプロジェクト。

 見たもの、人間の一生を全てキャプチャーして、スムーズに見られるツールができたら、人生を俯瞰できたり、歩んできたことを人と共有できるのではないかということで、1日中カメラを首からかけて写真を撮っています。もう80代ですけどすごいおじいちゃんです。

 彼にあなたならどんな研究所でも迎えてくれそうなのですが、なぜマイクロソフトに行ったのかと聞くと、自分がつくったものをたくさんの人が喜んでいる顔を見たい、賢い人がぶつけ合うのではなく、自分がつくったものを広めてもらうチャンスはマイクロソフトのほうが大きいと感じたからだと言っていました。

閑歳:その年齢まで執着心を持ち続けられるのもすごいですね。ユーザーからはよいことだけではなく悪いことも言われます。ただ、自分は何か特別な才能があるわけではないので、そうだよな、改善できることは多いなと、反省します。自分に自信がないからかもしれません。Zaimは少なくとも月に2回はアップデートしているのですが。そうした声を踏まえて継続的によいものを出していきたいと思っています。

古川:貴重なお話をありがとうございました。

閑歳さんのお話を聞いて――林正愛

 記者をしながら多くの人と会い、社会や組織の仕組みを俯瞰していろいろ知ったことが、ものづくりにも生きているとおっしゃる姿がとても印象的でした。「愛」がとても大事で、つくったものは受け入れられなければ意味がない、というのはとてもとても力強く、素敵でした。ユーザーのことを常に考え、とことん追求し、改良を続けていく。その姿勢を見ていると、新しいビジネスのやり方のヒントが隠れている気がしたのでした。

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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