今春から始まるNHKの朝の連続ドラマが、境港市出身の漫画家・水木しげるさん夫妻を描いたものということもあり、近頃なにかとスポットが当たっている鳥取県。おいしいカニが獲れることでは定評があるし、日本を代表する砂丘の存在もあって、県名にはなじみがあるはずだ。
しかし、もともと日本でいちばん人口が少ない県だから、地元以外でこの県の出身者と出会う機会は、どうしても少なくなる。ただ、わが国でほぼ最初に開けたと思われる北九州エリアに近いことから、その歴史はかなり古くまでさかのぼることができる。神話「因幡の白兎」の舞台も、ここ鳥取県である。
日本人に最も親しまれている童謡の一つ「故郷」の作曲者とされる岡野貞一は鳥取市出身だが、この県の人々は、地元に対する愛着が非常に強い。今でもこの歌どおりの豊かな自然が残っているのも、稀有なことと言っていいだろう。これは、歴史が長いわりに他地域の人々との交流が少なかったこと、また、幸か不幸か工業化、都市化があまり進まなかったからのように思える。
いわゆる「田舎」的な心情が色濃く残り
助け合い精神が強く息づいている
そのせいだろう、人々の気質は総じて、素朴で実直。その一方、保守的で引っ込み思案、何事も控え目ということもよく指摘される。都市化されていないぶん、近所の人との助け合い精神が強く息づいている。そうした環境にあれば、何をするにもゆっくりということになるのは当然かもしれない。軽自動車の普及率が断トツ(全国平均の2倍)というデータにも、そんなことがうかがえる。仕事、遊びを問わず、県外に出ていく機会も少なそうだ。
ある意味で、心に、そして時間に余裕のある人たちともいえよう。小・中・高の「朝の読書」実施率(92%)、ボランティア活動の年間行動者率が全国一というのも、そうしたことの表れではないか。
いわゆる「田舎」的な心情が色濃く残っている鳥取県の人々と付き合うに際しては、妙にカッコをつけず、自分の素で接するのがいちばん。むしろ、それが好感を持たれるし、ひとたび信頼関係ができれば、長い長い付き合いになること請け合いだ。
◆鳥取県データ◆県庁所在地:鳥取市/県知事:平井伸治/人口:59万1150人(H21年)/面積:3507平方キロメートル/農業産出額:682億円(H19年)/県の木:ダイセンキャラボク/県の花:二十世紀ナシの花/県の鳥:オシドリ
<データはすべて、記事発表当時のものです>