特区構想の修正が必要なわけ

 日本における特区制度の論議は、規制改革特区というかたちで行われてきた。その考え方はおおよそ次のようなものである。

 規制改革は簡単なことではない。既得権益もある。また、多くの制度は複雑に社会のなかに組み込まれているため、機械の部品交換と同じように制度を変えるわけにはいかない。

 そこで規制改革を進める手法として、規制改革特区という考え方が出てきた。まず、ごく小さな地域で規制改革を行ってみる。小さな実験だ。それでうまくいったら、全国に広げていけばよいという考えだ。

 しかし、小さな実験は、所詮小さな実験にすぎない。全国の多くの地域に「どぶろく特区」(小泉政権時の構造改革特別区域法によって酒税法の特例措置を受けた地域のこと)のようなものはできた。それに意味がないというわけではない。しかし、日本全体に広がりを見せるような大きな規制改革にはつながらなかったのだ。

 市町村や都道府県に、規制改革特区の構想を掲げて手を挙げてほしい、と要望すれば、多くの自治体が特区のアイディアを出すだろう。それはそれでよいと思うが、結果的には多数の自治体がエントリーして小粒の特区がいっぱいできることになる。

 安倍内閣が大都市で進めようとしている大型の特区は、そのようなものではないはずだ。将来の全国展開を前提にした特区による規制改革ではなく、大都市の構造そのものを大きく変えるような重点地域への政策なのである。