東日本大震災の津波によって、800人近い犠牲者を出した宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区。そのうち40人以上が、いまも行方不明のままだ。
震災当時、4000人ほどが在宅していたといわれる閖上地区で、なぜこれほど多くの犠牲者を出したのか。名取市は現在、第三者検証委員会を7月に設置して、検証作業を進めている。
その第1回委員会は、8月26日に開催。以来、犠牲者が集中した閖上公民館付近での避難の様子について、震災当日の状況を知っている住民を公募し、聞き取りを続けてきた。
10月31日の第2回委員会では、当日の災害対策本部や避難行動、鳴らなかった防災行政無線などについての検証作業の進捗状況が、公開で報告される。
検証の目的は「後世に教訓を残すこと」
第1回検証委員会で打ち出された方針
閖上地区で多くの犠牲者を出す舞台となったのが、市の指定避難所だった「閖上公民館」だ。当日、公民館に避難してきた人たちは突然、別の指定避難所の「閖上中学校」に移動するよう誘導され、多くの人が移動途中に津波にのみこまれた。
また、市の全域で、大津波を知らせる防災行政無線が鳴らなかった。さらに、名取市からの避難指示が「何もなかった」ことも住民の証言などで明らかになっている。
第1回委員会では、事務局を委託された一般社団法人「減災・復興支援機構」の推薦により、委員長に東京経済大学コミュニケーション学部の吉井博明教授(災害情報)。副委員長には東北大学の澤谷邦男名誉教授(電気通信工学)が選ばれた。
他には、東北大学災害科学国際研究所の越村俊一教授(津波工学)、関西学院大学の桜井誠一非常勤講師(防災行政、災害広報)、東北大学電気通信研究所の鈴木陽一教授(電気通信工学)、東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科の関谷直也准教授(災害情報)、兵庫県弁護士会の津久井進弁護士(災害法制度)、日本大学文理学部社会学科の中森広道教授(災害情報)、NPO防災士会みやぎ(日本防災士会 宮城県支部)の保田真理理事(市民防災)の計9人の委員で構成している(越村委員は、第1回委員会欠席)。
検証の目的については、「教訓を後世に残し、今後の防災対策に役立てる」こととして、何が起きたのか、なぜそうなったのか、今後の対策の3つの視点で、「科学的・客観的に」行うことが確認された。
これに対し、桜井委員から、「検証の目的の中に、住民の安心・安全という言葉が欲しい」という意見が出され、追加する方向で検討することになった。