京都は一般的に、新しいことに慎重でよそ者に閉鎖的な印象をもたれやすい。その京都市が今、外資系ホテルや企業の進出を大歓迎している。9月には、初めての外資系企業向け誘致セミナーを東京で開催した。京都市に何が起こっているのか。

――東京オリンピックの2020年開催は京都市にもチャンスです。外国人観光客の獲得にどんな策を繰り出しますか。

かどかわ・だいさく/1950年、京都市生まれ。62歳。立命館大学二部法学部卒。京都市教育長をへて、2008年に京都市長就任。現在2期目。
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 旅行に年間1億円以上使う人たちが世界に10万人いはる。日本は彼らを開拓しきれていません。東京オリンピック開催が決まる前の3月に富裕層向けの世界的な旅行商談会「ILTM Japan」が京都市で開催されました。商談会の開催地が検討される過程で、言語のバリア、インターネット対応、5つ星ホテルの立地状況などを問われました。

 100年、200年と続く料理旅館は欧米ホテル並みのセキュリティを持ち、多言語に対応し、そのうえに京都ならではのおもてなしがありますと応じてみせました。「それは素晴らしい」と言ってもらいましたが、実はね、多言語対応などができていなかった。開催までに市が24時間態勢の多言語対応のコールセンターを開設し、今ではバス停や地下鉄駅でWi-Fiも無料で使えるようになりました。

 東京オリンピック開催まで7年という年数は決して長くありません。「東京でスポーツを、京都では文化芸術を」合言葉に、日本の文化芸術を世界に発信していきたい。どう発信するかを練るべく京都市で協議会を立ち上げ、お寺や神社、文化団体、観光に従事するリーダーたちに参加してもらいます。新しいホテルの立地や建て替えなどハードからソフトまで、あらゆる受け入れ環境の整備にオール京都で直ちに取り組みます。

――京都市は2007年、景観を守るために建物の高さ制限などの規制を強化し、ホテルなどがさらに建てにくくなりました。2008年のリーマン・ショック以前に世界ブランドの高級ホテルが日本各地にオープンしましたが、このとき京都進出を目指したホテルはほとんど実現に至らなかった。その時代と比べて何か変わりましたか。

 京都には伝統的な旅館やホテルがありますが、さらに切磋琢磨するべく、10年に策定した京都観光振興計画のなかに世界的に知名度の高いホテルを誘致することを明記しました。外資系ブランドでは、「ザ・リッツ・カールトン京都」が来春、2年後に「フォーシーズンズホテル京都」がオープンします。