「いや、日本に似ているとは思っていない」。ECB理事会が利下げを決定した11月7日に、ドラギ総裁は記者会見でそう述べた。

 ユーロ圏の10月のインフレ率は前年比0.7%と9月の同1.1%から一段と低下した。一方で、ドイツのブンデスバンクは金融緩和の副作用で住宅ブームが過熱していると10月下旬に警告していた。今回の理事会で彼らを中心とする北欧勢は利下げに猛反対した模様だ。これほどの“南北対立”が勃発したのは異例といえる。

 日本のようなデフレを警戒したからこそ、ドラギはゴリ押ししてでも0.25%の利下げを決定したのではないか? と多くの記者が感じたが、冒頭の発言のようにドラギはそれを否定する。人々のインフレ期待は2%で落ち着いていると彼は語った。

 実際、今回の理事会の2日前に、欧州委員会は来年の物価予測を1.5%と発表したばかり。通常、両者の経済見通しに大きな開きは表れない。両者とも原油価格の影響が剥がれれば物価は緩やかに上がると見ている可能性がある。