一流の選手の思考から見えた
「メンタルが強い」の考え方の違い

 スペインで、はじめに行ったチームはリーガエスパニョーラのマジョルカというチームでした。スペインリーグの1部リーグに所属するチームで当時は、現在カメルーン代表のエトー選手やスペインリーグで得点王にもなったグイサ選手などがいました。当時の私からしたら練習生とはいえ「なんでこんなチームに来れたんだ!?」と感じずにはいられないチームでした。はじめてチーム練習に参加した時に緊張のあまり足がずっと震えていたことを今でも昨日のように鮮明に思い出すことができます。

 私はトップチームではなかったのですが、いつもトップチームと同じ時間帯、場所で練習がありいつもトップチームの選手が近くにいる環境で、ご飯なども一緒に食べに行くこともありました。

 エトーやグイサにあって私にないもののひとつが、「感情を評価しない」ということでした。

 感情を評価しないとはどういう事かというと、プラスの感情もマイナスの感情も同じように扱うということです。これができると安定して自己肯定感を持つことができるようになります。つまり、いつも自分に対してOKをあげられている状態をつくることができるのです。

マイナスの感情も受け入れよう――<br />「自分と向き合うこと」が実力の発揮につながるイタリアにプロサッカー選手を目指していた頃の森川さん(中央)

 日本では試合前に「緊張する」と言うとチームメイトから「お前メンタル弱いな」と言われました。しかし、スペインやイタリアでは試合前に「緊張する」と言ってもその感情を相手から評価されることはありませんでした。どんな感情を持っていたとしても、結果としていいプレーをすることができたのかどうかが評価の対象であり、その前にどんな感情を感じていてもそれは評価対象に入っていないのです。

日本では
メンタルが強い = マイナスの感情を感じないこと

スペインやイタリアでは
メンタルが強い = マイナスの感情を感じていても自分の力を発揮できる

 このように、日本では感情を含めその人を評価しているように感じます。しかし、今までの体験を思い出してください。多くの人の過去の体験の中には、緊張したり、プレッシャーを感じていても成功できたという経験があるのではないでしょうか。

 感情はコントロールできるものではありません。感情は無意識の部分で湧いてくるものなので、いくら意識的にコントロールしようとしても実はまったくコントロールできていないのです。マイナスの感情を感じたときに、無理にプラスの感情に変えようとすると感情と思考で違う指示を出すことになり、ストレスを増大させます。

 この状態では、自分の持っている力も発揮することができません。感情を評価しないことで、マイナスの感情を持っても自己肯定感を持つことができ実力を発揮することができるようになります。