今年、大ヒットしたテレビドラマと言えば「半沢直樹」。印象深いシーンやいくつもあるが、やはり上司の不正を暴くところは多くの視聴者にとって痛快だったことだろう。しかし、現実世界で半沢直樹のように、鮮やかに不正を暴くことは非常に難しい。やり方を間違えれば、相手から仕返しを受けるかもしれないし、会社内で居場所を失ってしまうかもしれない。では、不正を知ったとしても黙っていることが会社員としての処世術なのだろうか。決してそんなことはない。自分の立場や身分を守り、不正を暴く方法はある。具体的にどのような方法なのだろうか。(弁護士・秋山直人、協力・弁護士ドットコム

不正行為を正すか、
見て見ぬふりをするか

「上司が取引先から頻繁にキャバクラ等で個人的に接待を受けているのですが、どうも取引先からの仕入単価の査定を甘くして、水増しした金額を会社から支払わせているようです。接待はその見返りのようです。上司は役員の覚えもめでたく、逆らったら何をされるか分からないので、自分の名前は絶対に出したくないのですが、このまま黙っているのは我慢できません……」

「同僚はある弊社商品の品質管理担当者なのですが、飲んだ席で、取引先に開示している検査データの一部をいじっていると聞きました。上司の方針もあり、見栄えを良くしているようです。取引先に対する背信的行為だとは思うのですが、表だってそれはおかしいと声を上げるのは躊躇します……」

 このように、企業に勤めるビジネスパーソンが、上司や同僚の不正行為を知ってしまった場合、どうすれば良いだろうか。

 自分が不正行為を問題にしたと上司や同僚が知ったら、逆恨みされ、嫌がらせを受けたり、人事評価に響いたりするのではないか……。かといって、不正行為を見て見ぬ振りをするのは正義感に反する。会社内では板挟みになることも多いだろう。

 実際、正義感に駆られて不正を告発したものの、「犯人探し」をされ、社内で干されたり、希望しない配転・出向命令を受けたり、ひどい場合には解雇されたりといったブラック企業の事例も存在するのが現実だ。