多くの企業において、データや情報の共有化が推進され、分析環境の整備が取り組まれているにもかかわらず、国内企業の分析力は国際競争の土俵に上がっているとは言い難い。

分析力への関心の高まり

 1990年にビル・インモン氏が著書で「データウェアハウス」という言葉を定義して以来、企業におけるデータ分析への取り組みが活発化した。日本においても1990年代後半から、データウェアハウスの構築やデータ分析ツールの導入が盛んに取り組まれてきた。

 特定の業務分野や目的においてデータを活用する動きは、確実に広まったといえる。ITRが毎年実施している「IT投資動向調査」においても、「データ分析」は常に注力するアプリケーション分野の上位に位置している。

 しかし、データ分析の成果を、ビジネスにおける競争優位の獲得に活かすことができている国内企業は、必ずしも多くない。これは、データ分析が従業員が何らかの意思決定を行う際に、参考となる情報や示唆を提供するものという位置づけにとどまっていることに起因しているのではないだろうか。また、データ分析はマーケティングや販売促進のための手段であるという捉え方も、その潜在力を狭めているといえる。

 一方、ここにきてデータ分析を競争力の源泉とする動きが欧米企業を中心に活発化している。これらの企業ではデータ分析を戦略の中心に据えており、ビジネス戦略の実現や他社への差別化という直接的な活用を狙っている。この点において国内企業は、欧米企業に対して大きく水を開けられているといわざるを得ない。

 分析力への関心が高まっている理由としては、ビジネス環境の変動の激化と多様化・複雑化があげられる。現在の企業を取り巻く環境を見ると、もはや経験や勘を頼りに経営の舵取りをすることは不可能といえる。変化が著しく先行きが不透明であるほど、また、ビジネスが多様化し複雑化して全容を捉えることが困難であるほど、現状を正しく捉えることで将来を見通し、いち早く手を打つことが重要であることは火を見るより明らかといえる。

 例えば、大量生産・大量消費の時代のように「よいものを作れば売れる」という時代ではなくなっており、この状況を打破するためには、多様化し変化し続ける顧客のニーズや価値観を分析しなければならない。また、グローバルな競争においては、競合他社の動向、為替や資材の市況、国際情勢などが日々変動しており、これらをつぶさに把握して、自社にとって有利な状況を勝ち取らなければならない。

 さらに、状況を早期に察知するだけではなく、何らかの手を打つ際に、どのような手段が有効なのか、その手段を講じたらどのような影響が及ぶのか、他によりよい打ち手はないのかといったことまで検討しようとすると、予測やシミュレーションといった手法を用いることとなる。

「経営」とはそもそも継続的かつ計画的に事業を遂行すること意味し、“思いつき”や“勘と経験”に頼った事業の運営は経営とは呼ばないはずである。そう考えると、分析を抜きにして経営は成り立たないといっても過言ではない。