100年に一度の金融危機と叫ばれる中、世の中のパラダイムが変化し、新たにどのような価値観が誕生するか興味が尽きません。たとえばパラダイムの一つであった利益という概念が、変わろうとしています。利益至上主義の結果が危機を生んだとしたら、利益に変わる概念を経営に取り入れる必要があります。時価会計の緩和、見直し議論はそれを暗示しています。
変わらないものもあります。経営環境の変化によって、必要とされる経営手法は変わりますが、経営活動を数字で考え、数字で評価し、次の活動につなげていくことは、いつの時代にも必要なプロセスではないでしょうか。会計基準の共通化が進められていますが、この動きは、数字による評価の普遍性追求の動きです。
「計数感覚」とは会社数字を
経営とのつながりで見る力
いつの時代にも必要な視点があります。それは計数感覚です。今回から、「計数感覚で経営を考える」というコンセプトで、いろいろな事例をあげ、皆さんに考えていただくための機会を提供したいと思います。会社数字は苦手だという方には、特に継続的に読んでいただきたいと思います。
「計数感覚とは、会社数字と企業活動の関係を理解できる能力」と私は定義しています。ビジネスパーソンには、ぜひ身に付けていただきたいマネジメント能力です。計数感覚は、簿記会計を勉強しただけでは身につきません。簿記会計は決算書の作成技術であり、作成の理論だからです。数字を経営とのつながりで見るという意識をもたなければ、簿記会計の資格に合格しても、経理部門以外の人は役立つという感覚が生まれないものです。営業が長かった私もその一人でした。
一般に営業を長くやってきた人は、会社数字が持ち出されると一歩引いてしまい、自分とは別次元の問題として考えてしまいがちではないですか。逆に、経理を長年やっていても、経営現場のことを理解していないケースが多いものです。どの部門にいても、計数感覚で経営を考えられる能力は、求められる人材の必要条件ではないでしょうか。
会計や経営分析の知識と経営の現場感覚が融合したときに、計数感覚という経営リテラシーが芽を出し、あなたの中で育っていくのです。さあ計数感覚の扉を開けましょう。