米国経済は堅調維持するも新興国は下振れ <br />中国は矛盾抱えつつ表面上は安定成長持続<br />――日本総研調査部チーフエコノミスト 山田 久氏やまだ・ひさし
1987年京都大学経済学部卒業(2003年法政大学大学院修士課程・経済学修了)。同年 住友銀行(現三井住友銀行)入行、91日本経済研究センター出向、93年より日本総合研究所調査部出向、98年同主任研究員、03年経済研究センター所長、05年マクロ経済研究センター所長、07年主席研究員、11年7月より現職。『雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか』(2009年、日本経済新聞出版社)『デフレ反転の成長戦略 「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(2010年、東洋経済新報社)『市場主義3.0 「国家vs国家」を超えれば日本は再生する(2012年、東洋経済新報社)』など著書多数。

2013年は日本が大きな転換に踏み切った年だった。経済面では何と言っても「アベノミクス」に尽きる。黒田日銀が「異次元金融緩和」に踏み切り、10兆円を超える補正予算も手伝って、日本経済は回復基調に入った。さらに、2020年の東京オリンピック開催も決定、楽天の田中将大投手が24連勝という前人未踏の大記録を打ち立て、同球団は初の日本一にも輝いた。総じて日本経済には明るい雰囲気が戻りつつある。一方、安倍首相は年の瀬になって靖国神社に参拝し、日中、日韓との関係改善はさらに遠のいたようにみえる。

さて、新年はまず4月に消費税増税が実施される。景気への影響が懸念されるものの、財政再建には道筋がついたとは言い難い。さらに緊張高まる東アジア情勢に、安倍政権はどう対処するのか。2014年は午年。軽やかに駆け抜けることができるのか、暴れ馬のごとき年になるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。

①FRB量的緩和縮小で、米国堅調だが新興国経済下振れ

 FRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和の縮小がはじまるものの、縮小のペースはゆっくりしたものであり、米国金利の上昇は限られ、同国経済は堅調を維持。一方、世界的なマネーフローが変わり、エマージング市場からの資金の引き揚げ傾向の強まりから、新興国経済は下振れ。

②世界的ディスインフレ傾向強まる

 新興国経済の下振れに加え、欧米での労働分配率の低下・賃金の低迷による先進国内需の伸び悩みにより、世界的に需給が緩和し、ディスインフレ傾向が強まる。商品市況の上昇傾向は止まり、欧米ではインフレ率が2%を下回る状態が定着。