年も押し詰まった昨年の12月18日、FRB(米連邦準備制度理事会)が、「テーパリング(量的緩和の縮小)」開始を決定した。市場の予想より早い開始だったが、日米の株価は上昇、新興国市場も大きな変動はなかった。バ―ナンキFRB議長の発言を受け、大きく動揺した昨年5月~6月とは、打って変わった反応となった。

 この反応は、市場が「2013年を通じてゆっくりと回復してきた世界経済は14年も回復を続けるが、そのスピードは緩やかなものにとどまる」と予想していると言えるだろう。先進国の経済成長の歩みが速まる一方で、08年のリーマンショック以降、世界経済の成長を牽引してきた新興国の成長率が緩やかなものになるからだ。

米国はリーマンショック以降
初めての「通常回復期」に突入

 14年の世界経済の主役はやはり米国。「リーマンショック後、初めて通常の景気回復期に入る」(メリルリンチ日本証券・吉川雅幸チーフエコノミスト)。

「通常」という理由の第1は、家計の過剰債務の整理がほぼ終了しつつあることだ。リーマンショック前に起こった住宅バブルで、家計の借金は大きく膨らんだ。リーマンショック以降、家計の収入は借金の返済に回されてきたが、すでに家計の可処分所得に対する住宅ローンの返済負担率は、1981年当時にまで低下してきている。大和総研の近藤智也シニアエコノミストは、「住宅購入が増えていく局面に入った」と見る。

 第2の理由は米国GDPの7割を占める個人消費が、緩やかながらも堅調な伸びが見込めそうなこと。このところ非農業部門の雇用者数は月20万人のペースで増えており、失業率もピークの10%から7%にまで低下してきた。リーマンショック後の08年~09年で約900万人の雇用が失われたが、これまでに雇用はそのうち85%まで回復した。

 それでもまだ、労働市場では需要を供給が上回っているため、時間当たりの賃金上昇率は約2%と低い水準にとどまっている。つまり、個人消費の伸びは、給料が増えたことではなく、雇用者数の増加に支えられており、緩やかなものとなるだろう。