いよいよ今年4月から8%への消費税増税が始まる。増税によって家計の負担が増すのではないかと不安を抱く人も多いだろう。実は、不安要因は消費税ばかりではない。時を同じくして、我々の生活には増税・負担増ラッシュが押し寄せている。今回の増税をきっかけに、日本の家庭は5年先、10年先を見据えてどんな対策を考えるべきか。経済ジャーナリストとして独自の家計防衛策を提唱し続けてきた荻原博子氏が、徹底伝授する。第1回は、給料が増える見通しのないなか、国民の負担ばかりが増え続ける日本経済の構造的課題について、詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原英次郎、小尾拓也、片田江康男)

いよいよ始まる8%への消費税増税
企業の利益減少が家計へ波及する不安

――いよいよ今年4月から8%への消費税増税が始まります。多くの人は「増税で家計が悪影響を被るのではないか」と不安視しています。現状をどう見ていますか。

おぎわら・ひろこ
経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌『hanako』(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説。ビジネスマンから主婦に至るまで、幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌などの連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。『金持ち老後、貧乏老後』(毎日新聞社)など、著書多数。

 増税による家庭の支出の増加も不安ですが、重視すべきは企業への影響です。景気は上向いてきたと言われますが、増税で企業が苦境に陥れば、社員の給料も減り、結果として個人の家計が大きなダメージを受けるからです。

「消費税はみんなが払うから平等だ」と言われますが、実際には消費者に納税義務はなく、義務があるのは事業者だけ。問題は、彼らが消費税をきちんと商品やサービスへ価格転嫁できるかどうかです。体力のある大手企業はともかく、中小企業には増税分の全てを価格転嫁できないところもあるでしょう。そうなると、利益が圧迫されてしまいます。

 たとえば、1億円の売上で1割(1000万円)の利益がある企業の場合、今までも価格競争が激しくて消費税率(5%)の500万円が転嫁できなかったとすれば、8%への増税によって800万円支払わなければいけなくなる。そうすると、利益として手元に残るのはわずか200万円。まさに企業にとって死活問題です。

 ただでさえ、アベノミクで円安になった今、企業は商品を輸入するときに、これまでより高いお金を支払わなければいけなくなっている。それを国内で売るときは販売価格を上げないと利益が出ませんが、多くの企業は客離れを恐れて価格を上げられません。今後は消費税増税も加わって、ますますこの傾向が強まり、企業の利益は目減りして行きます。