1つ目は、その人にとっての「初めて」である、という「価値」です。どのジャンルで何を最初に体験するかは、運でしかないのですが、この「価値」は上書き不可能です。初めての旅行、初めてのロックサウンド、初めての恋などと同様に、最初に体験した商品やサービスは、記憶において一歩リードします。
 2つ目は、何かと「共有した時間」という「価値」です。体験したアイデアは、単なる内容だけでなく、どういう状況だったかが、併せて記憶されます。一緒にいた人とか、どんな日だったかとか、その時代の空気とかですね。商品やサービスも、体験した自分と自分を取り巻く他者とのコミュニケーション要素が、記憶を深めます。
 3つ目は、体験した人の「行動規範」になるという「価値」です。大人になるにつれ、経験したいくつものアイデアは、上書きされたり比較されたりして、相対的に記憶の中に位置づけられていきます。その中で、いつのまにか自分が物事を判断するときの基準となる記憶が生まれます。行動の前に、それがプラスかマイナスかを測る「行動規範」となるのです。このような、心の「ものさし」となるアイデアは、記憶に深く刻まれていきます。   (175~176Pから抜粋)

 上記の3つに当てはまるように、戦略的にアイデアが練られているのだ。

なぜ、子ども向け番組のプロデュース経験から、
アイデア発想術が生まれたのか?

 著者は、プロデューサーという立場で、多くの天才に出会っている。なかでも、2種類のアイデア発想の天才に出会った。

 一つは、仕事の達人・クリエイターと呼ばれる存在。
もう一つは、ターゲットとしていた子どもである。

 細かく分析すると、
前者は、
プロや天才と称される人ほど基本を大切にし、自らの欲望に忠実である
後者は、
大人の考えに惑わされず、本能による好き嫌いから発想できる
といえる。

 この分析、別のことをそれぞれ説明しているようだが、本質はまったく同じことを指している。

 つまり、どちらの天才も、物事の本質を見抜くカンを自然に養っているのです。

 プロの発想術は、基本を組み合わせた応用テクニックなので解析可能。子どもとは、この本を読んでいるあなた自身のかつての姿、つまり、誰の中にも、アイデアを本能から発想する素質は眠っている。 (3pより抜粋)

 アイデアに悩む普通の人が、この天才たちに近づくことは可能。そのために体系化したのが、本書の核となる「半径3メートル発想術」である。