「大人じゃなかった頃」の父親を見せる

――どんな風に伝えればいいのでしょうか。

柳沢実体験を元にした男同士の会話をするのがいいのではないでしょうか。一番分かりやすいのは、自分がその年代だった頃の話をしてあげること。子どもにとって、親は生まれた時から大人です。けれども、自分と同じように悩み、失敗しながら今に至ったと知ることで、不安が和らぎ、親がロールモデルになります。

  なおかつ、今自分が不安に思っていることとの比較対象ができる。物事を考える時に、何かと比較して同じ点や違う点を考えていくと整理しやすいのです。昔のアルバムでも見せながら子どもと向き合えば、会話も広がるはず。同じ目線に立って、たくさん会話をしてあげてください。

――“同じ目線に立つ”というのは?

柳沢 子どもを1人の人間として尊重し、目線を合わせることです。以前にもお伝えしましたが、子どもにとって一番腹が立つのは、「お前はまだ何も知らないんだから」とか「そんなんじゃ社会じゃ通用しないぞ」と、一方的に“上から目線”でモノを言われること。人間誰しも、上から目線で言われると聞き入れる気持ちも薄らぐし、反抗のひとつもしてみたくなるものでしょう?

  たとえば、子どもが自信をなくして不安を抱えている時には、「オレもそのくらいの時には同じように壁にぶつかったけれど、こんな風に考えて、こう学んだんだ」と、実体験を元に具体的な話をしてあげる。自分の体験をいろいろ使い分けて話すことで、子どももイメージしやすいし、自信を取り戻すきっかけにもなります。
  また、そういうコミュニケーションを普段からたくさんとっておくことで、反抗期に突入してもあまり難しいことにはならないと思いますよ。