日本銀行が「量的・質的金融緩和」を発表して1年がたつ。2014年度も日銀による大量の国債買い入れが続く見込みで、引き続き日本の長期金利は低水準で推移すると予想されるが、落ち着きどころとなる金利水準については判断が難しいところだ。
もとより、日本の10年債利回りは銀行の新規貸出金利(長期)との連動性が高い。金融機関が貸し出し減少のなかで代替として債券投資を膨らませたことに鑑みれば、国債利回りが貸出金利に近づくことで債券投資のインセンティブが高まったのも当然であろう。
しかし、12年度以降については、10年債利回りが貸出金利に届くことはまれで、また、貸出金利から相当に下方シフトした水準で推移している。これは日銀が貸し出し増加(リスクマネー活発化)を促すために国債市場への関与を強めた結果だろう。12年度には「資産買い入れ等の基金」が拡充され、13年度には「量的・質的金融緩和」における巨額の国債買い入れが決定された。
国債利回りが貸出金利を一定水準下回ることは、貸し出し増加を促すために必要不可欠な状況であるといえ、逆に国債利回りが貸出金利に並べば日銀の政策の効果が失われることを意味する。市場参加者の間でも、国債利回りが貸出金利を一定水準下回る状態がコンセンサスとなったようだ。
10年債の利息収入やロールダウン(時間の経過による金利低下)効果から算出されるクッションというパラメータ(ここでは10年債を1年間保有した場合に損失が生じないと考えられる金利上昇幅)に注目すれば、12年度以降は10年債利回りにこのクッションを足した利回りが貸出金利と連動していることがわかる。13年度以降は10年債とクッションの和が貸出金利に達すれば国債利回りの上昇が止まるような格好となっている。