話がこじれそうになったら、スピードを落とせ

 ただ、見方を変えると、「時間」に追われているのは、クレーマーのほうだともいえます。

 クレーマーにはさまざまなタイプがいますが、そのなかでも金銭目当ての悪質クレーマーは、怒鳴り声で相手をパニックに陥れておき、ボロが出ないうちに金品をかすめ取るのが手口です。これは、振り込め詐欺と同じです。

 つまり、警察の介入をもっとも恐れる確信犯的なクレーマーは、長期戦に持ち込まれることを非常に嫌うのです。なぜなら、交渉期間が長引けば長引くほど、警察に通報されるリスクが高まるからです。

 一方、対応する側は、必ずしも解決を急がなくてもいいという強みがあります。

 ただし、それは担当者一人だけではかないません。それは一人の「持ち時間」には限りがあるからです。たとえ、お客様相談室の専任スタッフやコールセンターのオペレーターであっても、一人のクレーマーにかかりっきりになることは不可能です。

 では、組織として対応したらどうでしょうか? 担当者のバックには、何人もの仲間がついています。クレーマーに対応する「延べ時間」はたっぷりあるでしょう。

 次回は組織で対応することを「基本の行動原則5」としてご紹介しますが、ここでは「いまここで結論を出せ!」と迫られ焦る家具店の店員のケースを『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』から抜粋します。「スピード解決を焦らない」という原則に照らしてどうすればよいか、考えながら読んでみてください。