新年度を迎えて1ヵ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍記憶に残る人になるの著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「それ言わなければ、評価されるのに…」“能力はあるのに嫌われる人”が口にしがちなNG発言・ワースト1Photo: Adobe Stock

「それ、知ってます」は誰のため?

 若手社員がやりがちな「失敗」のひとつに、「無意識にマウントをとってしまう」というのがあります。僕はこれを“無自覚マウント症候群”と呼んでます。

 悪気があるわけじゃない。でも、結果的に相手を嫌な気持ちにさせてしまう。僕自身にも、いまでも忘れられない苦い経験があります。

 あれは、31歳で営業職として新たな会社に入社した日のこと。入社初日から2日間は缶詰状態の研修があって、トレーナーの方が会社の歴史やプロダクトについて講義してくれたんです。

 でも、僕は入社前に会社のことを徹底的に調べていたので、ほとんどの情報はすでに知っていました。

 その説明の中で、「トラベラーズチェックを最初に作ったのが当社です」と言われて、思わずこう聞いてしまったんです。

「たしか最初に作ったのはトーマス・クック社ですよね? 現在、トラベラーズチェックを発行している会社の中では最古という意味合いで合ってますか?」

 完全にアウトでしたね。
 僕としては事実確認のつもりでしたが、結果としてその方の顔を潰してしまった。

 その場の空気は凍りつき、マネージャーを飛び越えて部長にまで話が行き、休憩中に呼び出されて思い切り怒られました。

「自信」が、無意識の「マウント」につながってしまう

 この背景には、無自覚ながら、自分の準備や知識に対する自信があったんだと思います。それが、周囲から見たら「マウントをとっている」と映ってしまったんです。

 こうした“無自覚マウント”って、意外といろんな場面で起きていると思います。
 たとえば「◯◯さんとよく飲みに行くんです」と言っただけなのに、「その人とつながってる自分」をアピールしたいように受け取られてしまうとか。

 これって、知識や人脈がある人だけの話ではありません。新卒や若手の方もやってしまいがちです。
 たとえば、若者向けプロジェクトの会議で「今の若い人ってこうですよ」と発言したり、テクノロジーやSNSの話題で、自分のほうが詳しいと思って解説してしまう。

 若手のうちは仕事で貢献できることは少ないですから、少しでも役に立てそうな情報や、自分が詳しいことがあれば、情報をシェアしたくなる気持ちはとてもよくわかります。

 ですがたとえ親切心であっても、相手には「知識アピール」に見えてしまうことがあるんです。

自分から「話す」より、相手に「聞いてもらう」

 だからこそ、「伝え方」に工夫が必要です。僕が意識しているのは、「自分から話すより、相手から聞いてもらう」こと。

 たとえば僕はホテルマン時代にワインの勉強をしていたので、知識はそこそこあります。でも、自分から話すとマウントっぽくなってしまう。

 そこで、あえてグラスの持ち方をプロっぽくしてみるんです。すると「福島さん、持ち方がさまになってますね」と言ってもらえます。そこで初めて「昔ちょっとやってたんですよ」と話せば、嫌味になりません。

 学生さんや若手社会人の方でも、すごい経験を持っている人がたくさんいます。スポーツで全国レベル、海外ボランティアに参加、ビジネスコンテストに入賞など。

 そういう素晴らしい実績も、“自分から語る”と「マウントとり」になってしまいます。

 自分からは言わないで、相手に興味を持ってもらい、自然に聞いてもらえるような工夫をする。そして聞かれたときにだけ、自然に話す。そうすれば嫌味にならず、ちゃんと伝わると思います。

 知っていること、経験してきたこと、それ自体は素晴らしい。でも、それを「どう伝えるか」で、相手からの印象はプラスにもマイナスにもなってしまうんです。

【訂正】記事初出時より以下のように修正しました。読者の皆様にお詫びいたします。
修正前「現存している会社としては最古」→修正後「現在、トラベラーズチェックを発行している会社の中では最古」
(2025年5月26日15:41 書籍オンライン編集部)

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

「それ言わなければ、評価されるのに…」“能力はあるのに嫌われる人”が口にしがちなNG発言・ワースト1福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。