昨年頭からスタートしたアベノミクスによって、長い眠りから目覚めた不動産業界。3月に発表された公示地価は、市場の盛り上がりを反映した順当な結果となった。
「最後の“大玉”が出た」──。米国の投資ファンド、ローンスターが売りに出した東京の目黒雅叙園について、不動産業界関係者は感慨深げにこう語った。
リーマンショック前のミニバブル時に高値つかみし、その後の市況低迷で塩漬けになっていた。1000億円以上ともいわれる巨額案件だ。
こうしたディールが動きだした背景には、不動産市況の大幅改善がある。2013年初から始まったアベノミクスによる景気回復とインフレへの期待が、08年のミニバブル崩壊後、“冬眠”していた不動産業界を目覚めさせた。
3月19日に発表された公示地価は、こうした市場の盛り上がりを反映。東京、大阪、名古屋の3大都市圏は6年ぶりに上昇に転じた。
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東京の復活の象徴となったのは銀座だ。国内の商業地で最高の公示地価を誇る山野楽器銀座本店は、昨年比で9.6%もの大幅アップとなったほか、東京圏の商業地の上昇率トップ10のうち、5地点が銀座だった。
「店舗の出店意欲が旺盛で、ビルの空きスペースがかなり減ってきた」。米不動産サービス会社シービーアールイー(CBRE)の水谷賀子バリュエーション&アドバイザリー・サービス本部長は、こう話す。
需要増の原動力になっているのは外国人旅行客だ。政府は「観光立国ニッポン」を掲げており、13年には訪日外国人数が初めて1000万人を突破。彼らを狙ったテナントなどが多く出店、賃料も上がり始め、地価を押し上げているのだ。
外国人需要に支えられているのは大阪も同じ。ローコストキャリア(LCC)の一大拠点となった関西国際空港にはアジアからの観光客が大勢降り立ち、難波や日本橋の家電量販店、周辺ホテルを潤し、不動産業界にも効果をもたらしている。
大名古屋ビルヂング、JRゲートタワー、JPタワー名古屋と、三つの巨大プロジェクトが進行中で、15年には様変わりする名古屋でも地価が上昇した。