今、巷では「深海魚ブーム」が盛り上がっている。深海魚を特集したテレビ番組が増え、全国の水族館では深海魚のグッズが好調な売れ行きを見せている。足もとでこれらのブームに拍車をかけるのが、今年に入り各地で大量に発見されている深海魚のニュースだ。その巨大さからグロテスクなイメージが強いが、よく見るとユーモラスなビジュアルで愛苦しくもある未知の生物・深海魚たち。しかし、普段めったに海上に浮上することのない彼らの発見に、海洋環境の変化を指摘し、「大地震の前兆ではないか」などと危惧する声もある。この現象に隠された意味とは何か。「あなたの知らない海の世界」の裏側をリサーチしよう。(取材・文/有井太郎、協力/プレスラボ)

「いったいなんだ、この魚は?」
盛り上がる深海魚ブームの背景

世界最大級の無脊椎動物と言われており、大きいものは触手も含めて10メートルを超えるという巨大生物「ダイオウイカ」
Photo:AP/AFLO

「それにしてもデカい……」「なんだ、この奇妙な魚は?」

 最近、テレビニュースなどを見ていて、思わずこんな声を上げた人は少なくないだろう。

 今年の1月から4月にかけ、新潟県佐渡市や富山県氷見市、石川県七尾市、鳥取県岩美町、島根県松江市などの日本海沖で、「ダイオウイカ」が次々と発見された。このわずかな期間だけで、発見例は10件を超える。ダイオウイカはその名の通り、「超巨大なイカ」。世界最大級の無脊椎動物と言われており、大きいものは触手も含めて、10メートルを超えるものもあるという。

 深海で生きた姿を捉えることが難しい幻の生物ではあるものの、弱ったダイオウイカがこのようにして発見された前例は過去にもいくつかある。とはいえ、これほど連続して見つかるのは珍しい。

 さらに深海生物の発見は、ダイオウイカだけに止まらなかった。より希少な深海魚も、今春までに多数目撃されていたのである。