【リクルートのケース】

「ブランドストーリー発想のポートフォリオ」で
成功するリクルート

 ブランドストーリーから発想すると、既存の商品群や、買収する企業やブランドの選定、買収した後のブランドの扱いについて、一貫したアプローチを取ることが可能となる。日本においてもRecruitグループがそれを試みている。

 リクルートの事業領域は、職、住宅、結婚式、車、旅行と多岐にわたるが、いずれの領域も人生の転機や日常生活の消費において、企業(クライアント)と消費者(カスタマー)をつなげる「マッチング事業」と見なすことができる。それを踏まえたリクルートのブランドストーリーは、「まだ、ここにない、出会い。」という言葉に込められている。様々な機会でのマッチングにおいて、より新しい、最適な出会いを提供することによって、より一人一人の可能性を広げることを目指すのが「Recruit」というコーポレートブランドである。

コーポレートブランドと
プロダクトブランドの役割の明確化

 一方でリクルートは、就職領域の「リクナビ」、旅行領域の「じゃらん」、住宅領域の「SUUMO」、結婚領域の「ゼクシィ」、飲食・美容領域の「ホットペッパー」等、200を超えるプロダクトブランドを擁している。

 IBMが「Smarter ○○」という概念でプロダクトブランドを一括りにしているのに対し、リクルートは、各プロダクトブランドの「個性」、「世界観」を大切にしており、それぞれが非常に特徴のあるブランドとして強い存在感を持っている。カスタマーにとっては、旅行、就職、飲食店を探すときに、限定性があるプロダクトブランドが真っ先に思い浮かぶ。一方、新しいビジネスを立ち上げるときには、クライアントに対してコーポレートブランドが利く。さらに商品が育つとプロダクトブランドがコーポレートブランドを支えていく。この循環、いわばブランドのパワーバランスが、絶妙に設計されている。

なぜ日本企業の海外M&Aや複数ブランド管理はうまくいかないのか?――“ブランドストーリー発想”によるマネジメントのすすめ