外国人と上手に交渉するコツ

 外国人チームとの交渉では、日本チームとは考え方がまったく違うということをよくよく自覚しなければなりません。双方の考え方がまったく違っていて、先方の提案に対して日本チームも最初は「NO」と言っていたのに、外国人チームから立て続けに強硬な反対意見が出て、反論の説明を試みても伝わらない。そして議論が進んでも合意に達しない状況が続くと、こちらがしびれを切らし交渉が面倒くさくなって、結局「YES」と答えてしまう、この状況は最悪です。笑い話のようですが、実際の会議・交渉では、このようなことが頻繁に起こっているのです。

5レベル交渉力<br />~外国人と対等に交渉する方法2011年ルーカスフィルムに各国代表が販売計画を提案した会議終了後、スカイウォーカー・ランチにて(右から3人目が筆者)

 なぜ最悪なのかというと、日本チームの交渉相手は、「最初はNOであっても、強く反対意見を言えば、だいたいYESになるものだ」と学習してしまうからです。こんなことが何度も続くと、「対等」に交渉すること自体ができなくなってしまいます。だからどうあっても、こういうことは絶対に避けるべきなのです。

 では、外国人と上手に交渉するコツはどこにあるのでしょうか?

 これについては、皮肉なことに日本的なコミュニケーションが得意な人ほど、実は不得意な傾向にあるようです。それを理解していただくために、TVCMの例で説明しましょう。

 TVCMは、広告主から消費者へのコミュニケーションです。売りたい商品・サービスの名前と特徴を、魅力的に伝え、購入喚起を促すのがその目的です。

 そのストーリーを「起・承・転・結」で考えると、実は日本で好意度の高いTVCMは導入部分の「起」や最後の「結」が省かれることが少なくありません。一方、欧米のTVCMで「起」や「結」が省かれることはほぼありません。

 なぜ日本の良質なTVCMで「起」や「結」が省かれているのでしょうか。それは、日本のTVCMの大半が15秒と、欧米のそれに比べると圧倒的に短く、そのため多くの情報を盛り込むことが難しいという、根本的な理由があります。

 しかしそれ以上に重要なのは、誰もが知る状況を長々と説明することは冗長な行為であり、場合によっては視聴者に自分たちを小馬鹿にしていると受け取られかねないということです。また、話の流れから結果が予想できるのに、あえてそれを説明するのは、センスのない、野暮な行為だと思われているということです。

 欧米に比べ価値観やライフスタイルの均質化傾向が見られる日本では、共通認識を「お約束」となる記号・ルールという形で入れさえすれば、前提の説明は不要であり、また最後の結論も、広告を見ている消費者が作り手と同じ想像をすると信じて、あえて省くことが可能なのです。送り手がすべてを説明する前に、受け手が察することを求める、「最後まで言わせるんじゃないよ」という、あれです。それゆえ日本では、センスのいいTVCMで「起」や「結」が省かれることが少なくないのです。

 均質化傾向の強い日本では、日本人同士のコミュニケーションが非常に洗練されており、「わかっていることはできるだけ簡略化する」「受け手は送り手の意思や考えを察する」ことが求められているわけです。だから、わかっていることをくどくど説明したり、不要なところで話の流れを折ったり、皆がわかっていることをあえて質問したりする「日本的なコミュニケーション」が上手でない人は、「KY=空気がよめない」と言われてしまうわけです。

 洗練された日本的コミュニケーションの最たる事例が、この「起」や「結」の省かれた好感度の高いTVCMだと思います。しかしながら、「外国人と上手に交渉する」場合には、この日本的なコミュニケーションの「洗練」を全面に押し出すと、大失敗することになります。

 なぜなら、海外では、日本社会のように人々の価値観やライフスタイルが均質化していません。必要十分な共通の土壌がないのですから、最初の設定が省かれると議論が嚙み合いません。だから最初の前提・設定について、日本人同士だと、くどいと思われるほどのしっかりした説明が必要なのです。

 また、結論についても、受け手が察してくれることを期待してはいけません。まったく違う価値観を持っているという前提で、自分の考えを最後まではっきりと伝える必要があるのです。