企業側から見ると、この変化はブランドコミュニケーションを大きく飛躍させるチャンスと捉えることができる。なぜなら、これからはユーザーベネフィットを語るコンテンツを通じて、ブランドに対する生活者の共感を得ることが可能になるばかりか、コンテンツの中のストーリーを確かな情報として拡散させてくれる伝道師を育てることも可能になるからだ。これが、「コンテンツマーケティング」が重要になってきている理由である。

 価値観が多様化し、幅広い認知がブランドコミュニケーションにとって、必ずしも有効とは言えなくなった現在、「コンテンツマーケティング」は、本質的で有益なコンテンツを提供することで、潜在顧客や新規顧客を、ロイヤリティを持った顧客に成長させる役割をより色濃く担うようになった。幅広い生活者をターゲットとするマスマーケティングとは異なり、コンテンツマーケティングの目的は、「興味や関心を持ってくれる顧客に対し、コンテンツを用いて、ブランド体験を提供することで、ブランドが有する価値観を共有できる顧客を育て、絆を深める」ことにある。

 デジタル化の進展により、コンテンツの情報は、ソーシャルメディア上で拡散していく。機能情報に留まらないブランド体験を届けてくれるコンテンツの重要性はますます高まっており、先進的な企業は、既にコンテンツマーケティングを活用して、ブランドの強化に取り組んでいる。

「日本ブランド」がグローバルに成長するために、ブランド体験づくりをテーマと掲げるこの重要性は第一回で既に述べた。では、グローバルに顧客に対して有益なコンテンツを提供しブランドに対するロイヤリティを持ってもらうために何をしていくべきか、いくつかのケースを通して考えていきたい。

商品自体をコンテンツに仕立てる
――日産GT-Rのケーススタディ

「日本ブランド」は顧客との絆を築けているか?<br />――グローバルに向けたコンテンツマーケティング戦略

 日産のスポーツカー、スカイラインGT-Rが、「マイナス21秒ロマン」というキャッチコピーを用いてマスマーケティングを展開したのは、今からほぼ20年前のことである。ドイツ・ニュルブルクリンク・サーキットはその過酷さから一周のラップタイムがクルマの総合性能を反映すると言われ、世界的にスポーツカー開発の聖地として名高い。前述のスカイラインGT-Rのコピーは、このニュルブルクリンクでの旧モデルとのラップタイム差を示すことで、モデルチェンジにより更なる高性能を手に入れたことを、ターゲットに効果的にアピールするものであった。