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外資系リーダーが日本を変える

「和魂洋才」が変える日本の空気
~「コミュニケーション技術後進国」としての日本

本田哲也・ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長

GAISHIKEI LEADERS
【第7回】 2014年10月3日
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 第1の理由は、大きな舞台背景。すなわち、情報メディア環境の変化とそれに伴う消費者の変化である。情報コンテンツの主役が企業から消費者へと移行する中で、「オレが、オレが」という企業発信の情報よりも、報道情報やクチコミの影響力が増した。「企業が主語」ばかりではダメで、「第三者話法」を取り入れないといけないことに気付いたのだ。

 2つめは、タイミングの問題。2008年9月のリーマンショックだ。リーマン・ブラザーズ破綻による世界的金融危機の影響をモロに受けたのが企業の広告費だ。それ以前から、巨額の広告投資に対し懐疑的な見方はあったが、なかなか削減できていないというのが実情であったが、皮肉なことに、「PRはお金のかからない広告」というPRにとって不名誉なレッテルが、本質的な戦略PRを世に放つきっかけになった。

 そして3つめは日本特有の理由による。僕たち日本人は、古来より「空気」を大事にする。老若男女、「空気」といえばピンとくる。かつそれが、「結局何をやってくれるのだっけ?」という質問への解答にもなっていた。

 日本は欧米に比べてPR後進国だとずっと言われてきたが、僕はその「説明の仕方」にも問題があったように思う。PRはパブリシティ。メディアに取り上げてもらうもの。そのためにプレスリリースを書く。取り上げてもらうためのプレスリリースの書き方とは……と細かい「技術」の説明に終始していた。一方で、広報の定義は「個人または組織体が、その関係する公衆の理解と協力を得るために、自己の目指す方向と誠意を、あらゆるコミュニケーション手段を通じて伝え、説得し……」という具合だ。どちらにしても、自分たちがやることやプロセスの説明をしているだけで、「何のためにやるのか」という視点が弱かった。「空気で人が動く」という戦略PRの理解が、日本人にはとてもしっくりきたのだろう。

外資系リーダーは日本の空気を「換気」する

 機は熟した。日本がグローバルなプレゼンスを上げるために必要なのが世界レベルのコミュニケーション技術であることは論を俟たない。その中核をなす考え方が戦略PRであり、ようやくその理解が日本でも浸透してきたのだ。「以心伝心」もいいけれど、これからは「何を」「誰に」「どう」伝えるべきかという戦略が必要だ。僕は、ここにこそ「和魂洋才」人材の必要性を強く感じる。

 「空気」という発想は、「和魂」である。今の時代、これまで是とされてきた米国ディベート方式――勧善懲悪的な二元構図――も限界を迎えている。ソーシャルネットワークが進化した社会でパワーを持つのは「共感」の力であり、共感を得るためにはインサイト(人の本音)の把握が欠かせない。空気(ムード)を読む、空気を感知する、空気をつくる――日本人が得意な空気の概念は、むしろ今後グローバルに通用するポテンシャルを持っているのだ。そして、冒頭で提言した「コミュニケーション技術」。戦略的なコミュニケーションの技術は、言うまでもなく「洋才」だ。

 ここに、外資系リーダーの活躍すべき領域がある。そろそろ日本も「換気」が必要な頃合いだ。以心伝心の日本式コミュニケーションでもない、二元論の欧米式でもない、ハイブリッドで新しいコミュニケーションのあり方で日本を変えていくのだ。

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外資系リーダーが日本を変える

真のグローバル経営を経験してきたビジネス・リーダーが、日本社会・日本企業の多様性の欠如や視野狭窄、長期停滞などの課題に対し新たな視点での解決策を提案し、政治・経済・教育の各分野から日本社会に変革を起こしていくことをゴールとして活動する「GAISHIKEI LEADERS」。そのメンバーが、日本企業にとって最優先課題といえる「経営のグローバル化」について各自の経験と知見に基づき、グローバル規模の仕組みを理解し、日本のユニークな強みをそれと調和させた上で一層輝かせていくための新しい「グローバル経営論」を解説します。

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