為替レートは、9月になると1ドル105~110円へと極めて速いペースで円安方向に動くこととなった。企業経営者などからは、この円安に対する批判的な意見が数多く述べられるようになった。

 筆者は、マクロ経済が正常化していく流れの中で、円安のモメンタムが止まってしまうことは、デフレ脱却・経済正常化を考える上ではマイナスと考える。また、現状、円安批判として挙げられている論拠も、よく考えると、産みの苦しみを逃れたいという副作用の問題に思える。

 まず、円安批判の代表的な意見を整理しておこう。

(1)輸入コストの上昇を価格転嫁するのは難しく、企業収益にとってマイナス

(2)円安は内需を冷え込ませる、交易損失を増大

(3)円安は経済的弱者には負担が大きい、格差拡大作用がある

(4)円安誘導を行っても輸出は増えない、メリットなし

 様々な円安批判は、上記の4つの組み合わせ、または変形として語られている。

 確かに、原発が止まり、化石燃料に依存して、貿易赤字を拡大させているわが国には円安メリットは感じにくい。一方の円安メリットも、輸出数量を増やせないことで、企業の固定費負担を軽減させにくく、むしろ変動利益の圧縮を意識させる。輸入物価の上昇は、名目賃金に対して物価上昇率がそれに追いつかず、実質賃金の低下をもたらす。年金生活者の負担増は、収入が増えない点で勤労者以上に重い。

改めて円安メリットを考える

 円安にも円高にも、ともにメリット・デメリットがあることは当然のことである。合理的な発想をすれば、デメリットの部分をどうやってメリットで相殺・減殺していくのかが、課題解決の鍵を握る。