1つの価値観に縛られたままの大学入試

――1つめの理由にあった「日本の若者の強い自己否定感」ですが、これは日本の教育が抱える問題の象徴でもあるかと思います。なぜ、そうした高校生が増えてしまったのか。大臣が掲げる教育改革では、これに対してどのようにアプローチしようとしているのでしょうか。

下村 そうした高校生を生み出してしまった典型的な原因が、「大学入試制度」にあると私は考えています。つまり、偏差値という1つのモノサシだけでやってきてしまったことがその根本にあります。もちろん、いまは多様な入試にチャレンジしている大学もありますが、基本的には、暗記や記憶といったいわゆる知識詰め込み型の学力で合否が決まるところがほとんどです。それは高校生から見れば、やはりどうしても受験勉強という1つの価値観に縛られてしまう。それ以外の多様な面を評価される機会がなかなかないのです。

 しかし、グローバル化が進んだいま、実社会では1つの価値観だけに縛られる時代はとっくに終わりを迎えていて、むしろ多様性が重視される社会にシフトし始めています。にもかかわらず、日本の教育現場、とくに大学入試の場面においては、いまだ1つの価値観に縛られた状態が続いています。そうした実社会と教育現場のギャップに対し、大学受験に向かう高校生たちはある種の息苦しさのようなものを感じているのではないか。それが強い自己否定感につながっているのではないか、と思うのです。

 ですから私は、自分に可能性があると誰もが感じられる社会にしていくためには、多様な価値観というものを教育のなかにどう取り込んでいくかにかかっていると思っています。その多様な価値観を取り込むための1つが、いま推し進めている大学入試制度改革です。具体的には、これまでのセンター試験を廃止し、継続的な学習と課外活動の成果、つまり総合力を評価する入学試験に変えようとしています。一定の学力に加え、それぞれの個性や能力もきちんと評価される入試制度にしなければなりません。

教育に対する親の意識を変えるには?

――教育現場にもそうした多様性が問われる時代になったにもかかわらず、しかしその一方で、われわれ親世代の価値観は多様化できていない、という現実があります。東大を頂点とした良い大学に行かせたい。そのためには小さい頃から塾に入れて、良い小学校、良い中学校、良い高校をめざすというのが、ある意味スタンダードです。だからこそ、親の意識を変えることも重要な気がするのですが。

下村 親の意識を変える一番の近道は、「大学が変わる」ことだと思うのです。もちろん、東大が日本の大学の頂点であることは否定しません。東大にはこれからも日本のトップ大学であってほしいし、むしろ世界のトップをめざしてほしい。しかしそのためには、いまの入試制度でいいのかというと、決してそうではありません。世界でトップクラスの人材を育てるためには、学力だけでは通用しないのは言うまでもありません。ほかにも多様な能力が求められます。私はそのなかでも最も重要なのが、次の3つだと考えています。