FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和政策が出口に向かう中、為替市場ではドル高が進行し、円やユーロに対してだけでなく、オセアニア通貨や新興国通貨に対してもドルは上昇している。
そうした中、FRBが公表した9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録は市場参加者を驚かせた。議事録によれば、ドル高で財やサービスの輸入価格が抑制され、米国内のインフレ率が目標の2%を下回る水準にとどまる可能性が指摘された。つまり、足元のドル高の持続によってFRBの利上げの前提となる物価上昇が生じない可能性が示唆された。
過去のドルインデックスと米国の消費者物価の関係を調べてみれば、強い連動性が示されている。市場参加者はFOMC議事録公表後に米国債買いに動いたもようだ。
利上げが遠のく観測が強まれば、本来はドルが下落し、再び物価上昇期待も高まるはず。しかし、日本銀行の黒田東彦総裁が円安志向を変えず、ユーロ圏でもデフレ懸念が払拭されないことを背景にECB(欧州中央銀行)の追加緩和への期待も残っている。足元のドル高は円安やユーロ安に支えられている側面もあり、利上げ観測が遠のいた程度ではドルが売られない可能性が高い。