前編に続き、H-LABを立ち上げた小林亮介氏(右)と国際コラムニストの加藤嘉一氏の対談後編をお届けする
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ハーバード大学のリベラルアーツの仕組みを基に、日本の高校生に国籍や世代を超えた交流の場を用意し、新しい進路指導とキャリア教育の確立を目指すH-LAB。今年も8月、H-LABによるサマースクールが日本各地で行われ、現役のハーバード大学の学部生が日本へやってきて、参加した高校生たちと交流した。小林亮介・H-LABファウンダー兼エグゼクティブディレクターと国際コラムニストの加藤嘉一氏は、ハーバード大学で2年間、学部生とフェローという違いはあったものの、交流があった。加藤氏は自らの行動規範である「だったら、お前がやれ(DOY)」(意味:当事者意識をもって、自らの行動を起こす)という精神を共有し、実践できる学生として注目していたという。前編では、小林氏が始めたH-LABの活動内容や立ち上げたきっかけを語ってもらった。後編では、H-LABが現在のようなコンセプトとプログラムになる過程で、大きな影響を与えたハーバード大学のリベラルアーツと同大学にあるコミュニティの持つ力について、話を聞いた。(取材・構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

問われるのは「コミュニティに
どのように貢献できるのか」

こばやし・りょうすけ
1991年東京都生まれ。2009年3月桐朋中学・高等学校卒業、同年4月一橋大学入学、同年9月ハーバード大学に入学。14年6月、同大学卒業後、帰国。在学中からH-LAB立ち上げに取り組む。9月より社団法人化し、本格的にH-LABに取り組み始めた。
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加藤 サマースクールではハーバード大学にあるハウスシステム(寮制度)を採用しているよね。リベラルアーツの本質もハーバード大学での大学生活を通じて得たものだと。僕もハーバードで2年間研究生活を送らせていただきましたが、多様性に富んだ知的空間だと常々感じていた。ただ学部生という身分は特別であり、ハーバードの真髄をもっとも直接的に感じられるのも学部生だと思います。卒業した今、振り返ってみて、5年間のハーバード学部生生活はどうでしたか。

小林 本当に充実していましたね。多様性の話がでましたが、本当にいろいろな人がいました。誰一人、自分と同じような人はいませんでした。全寮制なのでそういう多種多様な人たちと寝食を共にするのは本当に楽しかった。

 僕のルームメイトは片言レベルを合わせ、13ヵ国語を話せました。彼は今プリンストン大学で経済学の博士課程にいますね。スポーツがプロ級の人もいます。今のハーバード大学のサッカー部のエースは日本人ですよ。小林寛生君といって、彼もプロ選手を目指しています。将来的にはジェネラルマネージャーとしてクラブチームを経営したいって言っていました。

加藤 小林くんは確かフォワードだったよね。

小林 そうですね。彼は応用数学を専攻しています。彼みたいにスポーツの分野でトップ級の人だけではなくて、バイオリンがプロ級の人もいるし、数学オリンピックで上位に行くような人もいます。

 学部生の1600人全員が寮で生活しているんですが、入学試験では「あなたはハーバードのコミュニティにどのように貢献できるのか」ということを問われます。だから単に勉強ができるだけの人が集まるっていうことではないです。もちろん、オールAで、勉強はできる人は多いんですが……。まあ誰をとっても自分と違いすぎるので、何か一律の基準で競うというよりは、その違いから学ぼう、って気になってきますよね。