部下の成熟度で異なる
監督のリーダーシップの取り方

 一番準備が整っている人というのは、自分でやることがわかっていて、セルフモチベートができる状態になっている人だ。こういう人はどういうふうに動機付けるか。一番いいのは放っておくことだ。そういう人に、コーチや監督があまりがたがた言うと、スポイルしてしまう。逆にやる気がなくなってしまう。だから黙って見ていて、そうした人間でも悩んでいる、困っているという時にだけ、タイミングよく手を差し伸べるのがいい。

 これは図の左下、委任型である。選手をすべてこの状態にもっていくのが理想だが、中には最初からこういう逸材もいる。

 また、新人の多くは右上だからコーチ型の指導がいいのだが、中には右下の状況で入って来る選手もいる。元気はいい。やる気まんまんで入ってくるのはいいのだが、残念ながら能力はまだそれほど高くない場合だ。プロ野球よりも、企業にはこういう人はたくさんいる。

 こういう人はやる気はあるのだから、少々のことを言ってもめげないので、やるべきことをしっかり教えてあげればいい。指示型である。それで能力が伸びれば、ますます楽しくなってくる。

 一番、やっかいなのは、やる気はあって、指示してやらせているのだけど、伸びがあまり期待できないという選手。そのまま1年、2年経ってしまうと頭痛のタネになる。ブランチャードは、そうした対象者を「幻滅した学習者」と呼んでいる。

 やる気満々で厳しい指示どおりにやってみたのにできない。「何だ、できないじゃないか」と意欲もどんどん低下していってしまう。右下から右上、つまり、意欲も能力も上がらないという最悪の状態に逆戻りしてしまう。

 こういう人たちこそ、コーチ型でしっかりと受け入れて、悩みを聞いてやって、やる気も引き出してやる必要がある。そこで何とか技術だけはついてくると、左上の状況に移行する。能力は高くなったのだけど、まだ意欲が十分ではないという状態だ。

 ビジネス界で言えば、優秀な大学を出て、高をくくっている新人などもここに入ってくるのだが、自分の立場を自覚させるというのが一番いい。

「君は能力が高いのに、その能力を発揮していない。それは問題だ」ということをちゃんとわからせていく。さらに言えば、「君こそが周りの範となるべきだ」と言うことで、役割をしっかり与えていく。これを協労行動というが、そういうやり方をとっていかなければいけない。

 そのように、一人ひとりの状況に応じて、どういうストロークをかけるかを微妙に変えていくというのが二軍監督のうまさだと思った。次回は、具体例を交えて、話を進めたいと思う。

 実際、二軍監督を分析すると、選手それぞれの動機モデルを非常によく見極めているということがわかっておもしろい。