ゴールドマン・サックス証券会長 足助明郎
撮影:住友一俊

 3月21日の「(金融危機克服のための)有識者会合」で(麻生太郎)総理にも申し上げたことですが、金融市場としての東京の国際競争力が著しく低下しています。この3月に発表された国際金融センター・インデックスによれば、東京は15位。前回(2008年9月)は7位だったから、わずか半年で大幅に順位を落としたことになる。

 ちなみに、1位はロンドン、2位はニューヨーク。アジアでは、シンガポールが3位、香港が4位で、これら4都市の順位は前回と変わっていない。つまり、いまや「アジアの金融センター」はシンガポールであり、香港になってしまったのです。今回、日本はガーンジーやジャージーにも抜かれてしまった。両方ともイギリス属領の「島」ですよ。インフラもなにもない、税制優遇しているだけの島に負けているという現実は、わが国にとって非常に重い。

 国際金融センターとしての地位が低い一因は、英語が通じないことにもある。だから、そのうち(英語が通じる)ムンバイ(インド)にも負けるでしょう。

 日本人は英語がしゃべれないから内向きだという見方もあるが、内向きだからしゃべれないということもある。だから、最も早いタイミングで内需復活していくであろうアジア──とりわけ中国・インド──にもっと目を向けるべきではないでしょうか。

 目先の危機対応も大事ですが、中長期的な国家戦略がなければ、日本は道を誤るという気がしてなりません。 (談)


(聞き手:『週刊ダイヤモンド』副編集長 藤井 一)