高野 石坂社長がすごいのはその徹底ぶり。どの経営者もやっていることを、誰もやらないレベルでやる。たとえば、従業員のことを大切にする経営者は世の中にたくさんいます。でも、石坂社長は従業員の健康を考えて空調設備に数億円をかけています。そういう経営者はいません。レベルが段違い。

石坂 ダイオキシン騒動が起きて、プラントを立て替えるとき、産廃業者のイメージを払拭した清潔感のあるプラントをつくろうと思いました。それは、すべての設備が建屋の中に入った「全天候型プラント」で外見がパン工場のようなものです。

高野 実際、そのような印象でした。

石坂 ただ、粉塵が外に出ないということは、建屋の中に充満するということです。そんな環境では働きたくないでしょう。「永続企業」をつくるのに、社員が働きたくない環境ではダメです。高いとか安いとか、元が取れるかとれないかは関係なく、初期投資として必須だと思いました。ビジネスにおいて、おもてなしすべきは誰かを考えたとき、お客様や取引先が思い浮びますが、社員へのおもてなしも大切だと考えています。

【第1回】<br />リッツ・カールトンをしのぐ“石坂ミスティーク”!<br />高野登が石坂産業で受けた「270度」の衝撃<br />高野登×石坂典子対談【前篇】

リーダーに必要な3つの資質とは?

高野 それを「投資」と見ているところがすごい。「コスト」と見る経営者が多いのではないでしょうか。働いている社員は会社にとって最大の財産です。だから、そこに投資しなくてはいけない。でも、なかなかできないことです。私はリッツ・カールトンでリーダー資質の3要件を習いました。それが、愛と勇気とパッション(情熱)。その中でも一番大事なのは何だと思いますか?

石坂 うーん。何でしょう?

高野 実は、勇気なんです。ダイオキシン騒動で地域に嫌われ、社員も4割辞めていっても、石坂社長はブレない軸を持って改革をやり続けた。それがいま、圧倒的な価値を生み出し始めた。これはすさまじい勇気だと思います。リッツ・カールトンでも「圧倒的」がキーワード。英語で言う“outstanding”。これが石坂産業にそのままあてはまる。いまの時代、何事にも圧倒的でなければならない。それともう一つのキーワードが「劇場化」。石坂産業にお伺いするたびに、“所沢劇場”を感じるのは私だけではないでしょう。アマテラスを祀る神社もあって、アミューズメントパーク化しているのがすごい。

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石坂 ありがとうございます。やはり「一回きりで終わり」ではなく、「またきたい!」と思わせる会社でなければと思っています。まだまだできることがあるので、これからもどんどんチャレンジしていきます。