株価は将来を予見して動く。その株価が暴落しているのは、将来景気が悪くなり、企業業績も悪化することを予見しているからだ。現在の株価下落で、割安感が盛んに強調されている。しかし、割安感の修正が株価上昇によって実現されるのではなく、企業業績の悪化によると考えれば、積極的な買いが入らないのは当たり前となる。
日本株が売られている理由は明白だ。サブプライムローン問題が米国の住宅や金融にとどまらず、金融保証保険会社(モノライン)問題によってサブプライムとは関係のない米国の地方債にまで波及している。米国の経済全体や他国の金融にも影響を及ぼし、世界経済にも悪影響を与え日本にも伝播する可能性が高まった。とはいえ、今の日経平均株価のPER(株価収益率)は、バブル後の最安値である7600円台を記録した2003年4~5月よりも割安だ。いくら日本の景気が悪くなったとしても、あの当時を再現するとは思えない。ならば売られ過ぎ分のリバウンドは、あって然るべきだ。
業績面から今の日経平均は、どの程度の減益を織り込んでいるのか。今期予想連結PERで、ここ数年の底値だった16倍が妥当水準と仮定した場合、足元では来期15%減益となる水準までたたき売られている(グラフ参照)。日本経済の減速は避けられないが、そこまでの減益を予想するアナリストは皆無である。売られ過ぎ分のリバウンドは、期待できるだろう。
日本株は世界に先駆けて大きく下落した。改正建築基準法など官製不況の影響は大きく、バラマキ政策復活による改革逆行、さらにブルドックソースの買収防衛判決による「国を挙げてM&Aに反対する市場」という国際的レッテルを貼られたことが響いた。サブプライム問題が波及すれば、おそらく日本は低空飛行ながら戦後最長といわれた景気回復局面を終えることだろう。
以上を考慮して今後の相場を予想すれば、売られ過ぎ分のリバウンドが見られた後、上記懸念が現実となってあらためて売り直される展開が怖い。現時点では日本経済が再びデフレスパイラルに戻ることは考えにくい。短期的には売り直されても下値は限定的だろう。だが、日本の政治力の欠如は深刻な問題だ。最近の株安は経済政策に対する不信感の表れではという質問に、福田康夫首相は「そんな専門家いますか? ちょっとお顔を拝見したいですね」などと言う始末。市場の声に応えようと躍起になる米当局とは異なる日本政府。株価は本当に憂慮しているのだ。
(株式市場問題研究家 大山 巖)