「軍事」と「通貨」に注目
私もロケット第1号の打ち上げを実現したい
A.世界では2つの大きな動きが起こっています。
それは一つは「軍事」において、もう一つは「通貨」に関してです。いずれも国家の根本にかかわるものであり、この変化は世界を根底から揺るがし、国民生活に多大な影響を与え、民主主義すらも変革してしまうものになるかもしれません。
まず「軍事」に関わる技術ですが、注目点したいのは商業用ロケットの開発促進です。
商業用ロケット技術については、そもそもは1998年、米国の「商業宇宙法」(Commercial Space Launch Act)の制定に端を発しています。それまでNASA(米国航空宇宙局)の主導で行われてきたロケットの打上げを、民間にやらせようという法律です。
すでにスペースシャトル計画を中止しているNASAは、今後は従来型のカプセル型宇宙船で、地球の軌道上よりもさらに遠い宇宙を探査するというプロジェクトに軸足を置いて開発を進めています。
その背景には、従来の地球の周回軌道へのロケットの打ち上げは、その技術が十分に習熟したこともあって、民間企業でも十分に担っていけると判断したのだと思います。
米国は、自前の技術が国外、特に主要国に拡散していないときはそれを保護するための規制を強化する傾向があります。しかし、いったん、それが拡散してしまった後には、商業マーケットで米国企業が主導権を握れるよう規制緩和をすることが多いのです。
オンライン取引を安全にできるようにした「RSA公開鍵暗号方式」が良い例でしょう。80年代まで輸出を厳しく規制していましたが、PGP方式が広くインターネット上で拡散した後は、米国企業の商業的優位性を確保するために、輸出制限を緩和したほどです。
こうした規制緩和の恩恵を大きく受けているのが、テスラ・モーターズ社の創業者でもあるイーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャーのスペースX社です。この会社はCOTS計画という、国際宇宙ステーション(ISS)への物資・人員の輸送手段を民間委託するプログラムに選ばれ、多額の予算を確保しました。
他にも、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏の設立したブルーオリジン社があります。ブルーオリジン社は米国の主力ロケット「アトラス」の1段目に使われている高性能なロシア製ロケットエンジンと同程度の性能を有するロケットエンジンを開発中とのことです。世界を見渡せば、政府系が開発するEUのアリアンロケットや、日本のH2Aロケット、中国の長征ロケット、ロシアのソユーズなどが出てきています。
私も小型衛星を打ち上げるための格安ロケットの研究開発を、インターステラテクノロジズ(本社・北海道大樹町)で行っています。順調に進めば、15年中にも弾道飛行に成功する見通しです。
宇宙にたくさんの人が行き、たくさんのモノを運ぶためには、そのためのさまざまなものの価格が劇的に安くなることが必要です。今後、スペースX社主導でロケットなどの価格競争が起きれば、その普及に弾みがつくことでしょう。
もう一つの大きな変化、それは「国際通貨」における、まさに世界を揺がす大きな変化、それはすでに足元から起きつつある変化です。
それは…。