「借りられるというのは信用の証しだ」「納税は会社の使命だ」などと言って、倒産した企業を私は何社も見てきました。「お金よりもっと大事なものがある」と言われますが、それはきれいごとにすぎません。とくに、中小企業においては、ミエ、メンツなどどうでもいいのです。大切なのは「お金を残すこと」なのです。

キャッシュイン(流入)を
増やそうと思ってはいけない

 会社にお金を残そうと思うと、考え方は2つあります。

(1)キャッシュイン(お金の入り)を増やす
(2)キャッシュアウト(お金の流出)を減らす

 このどちらかですが、経営者の方はとくに(1)を選ぼうとします。「ここまで会社を大きくしてきたのは、リスクを取って勝負してきたからだ。攻撃は最大の防御だ。勇猛果敢に手を打って、売上を伸ばし、お金を増やせばいいじゃないか!」と考えます。

 しかし、これからの日本は国内人口の減少とともに総需要が確実にしぼんでいきます。一方で、TPPなどによる自由貿易の拡大、規制緩和の進展によって、海外からライバルが続々と参入してきます。

 どう考えても、売上を伸ばすことは難しくなってきます。無理に売上を伸ばそうと、営業マンを投入し、広告宣伝を打って、販促費をバンバン使っても、多様化しすぎたニーズを的確にとらえられる保証などどこにもありません。

 仮に運良く商品がヒットし、売上が増えたとしても、今度は、在庫の手当、売掛金の増加で、たくさんの運転資金が必要になります。増産のための設備投資も考えなければなりません。

 みなさん勘違いされるのですが、売上が増えたからといっても、すぐにお金が増えるとは限らないのです。

 つまり、客観的に考えて、(1)は簡単な話ではないのです。