起業家を追い込む
社会保障制度

 まだ創業して半年にもならないが、改めて起業には大きなエネルギーが必要だと思う。

第2回で述べたように、やりたいことが固まったとしても、一緒にリスクを取って挑戦してくれる仲間を作り、共に行動に移すことは簡単ではない。

 そして、チームが固まって会社ができたとしても、貯金が減る不安との戦い、稼ぐことの難しさの体感が待っている。その不安と体感は事業が安定軌道に乗るまでずっと続くだろう。

 今回ご紹介した政府の起業家支援プログラムは、起業家が乗り越えるべきさまざまなリスクや困難を相当程度緩和するための措置であることは間違いない。

 しかし、日本再興戦略に書かれているような「新陳代謝とベンチャーの加速」を本気で実現していくためにはまだまだ環境整備が不十分と感じる。

 現時点でも述べたいことは数多くあるが、今回では2点だけを主張したい。

 1つは、実際に起業した人たちの体験や苦労を、これから起業する人たちが事前に知るための機会がほとんどないということだ。

 筆者の場合には、ベンチャー投資を行っている官民ファンドの産業革新機構に出向経験があり、経産官僚時代のつながりで多くのベンチャー企業や中小企業の経営者との接点があったため、起業に伴う課題や先人たちがとってきた解決方法について勉強する機会を持つことができた。

 しかし、まだまだ起業する人材が少ないなかで、企業や大学などで技術開発や研究を長年続けてきた人たちが起業する場合はどうだろう。筆者のような機会を持つことはほとんど難しいのではないだろうか。

 起業家向けにセミナーや研修プログラムも数多く開催されており、筆者も時折参加するが、生身で体験してきた人が直接指導する、逆に起業家の方から直接相談できる、といった機会はまだまだ足りないように感じる。ITやインターネット系に関しては、もう少し恵まれているのかもしれないが、少なくともモノづくりの世界ではそう感じる。