2つ目は、社会保障制度の問題である。

 創業時には外部からの収入が一切なくなる。一方で、新会社への投資、事業創造に必要な活動費、自らの生活費など、支出は減るどころか膨らんでいく。役員報酬という形で会社から自分に給与を支払うことは可能だが、これも元をたどれば自分の貯金から切り崩した資本金から拠出されるので、「蛇が尻尾を食べる」だけに過ぎない。

 それにもかかわらず、年金も健康保険料も住民税も、1年前に安定収入があった時を想定して請求書がやってくる。加えて、外部からの収入がなくなっているにもかかわらず、職を失った状態ではないので失業給付は支給されない。

 つまり、現行の社会保障制度では、解雇、自己都合での退職、定年退職などは救済されるが、起業の場合は、救済どころか、逆に追い込まんとするくらいの扱いになっているのである。同じように、税制についてもさまざまな課題があるのだが、それは今後の連載で述べたいと思っている。

サラリーマンが前提の社会
新陳代謝は本当に進むのか

 政府が提唱する「新陳代謝とベンチャーの加速」はマクロ的には正しいと思うが、実際に起業してみると、創業半年未満でも数多くのミクロ的な障害に直面している。

 戦後の日本では、サラリーマンを増やすことが国の経済成長につながるとし、社会制度自体もサラリーマンを前提に設計してきた。しかし、時間の経過とともにサラリーマン社会が硬直化し、「血の巡り」が悪くなってきたことで、新陳代謝が必要になった。そのため、ベンチャーを加速することで新陳代謝を進めようという方向性が打ち出されたのだろう。

 しかし、現実を見ると、社会制度上は、起業家よりもサラリーマンが優遇されたままだ。持続的に起業家を生み出し続けるためには、起業家支援プログラムで選ばれた人たちだけに一時金を配るだけでは不十分であり、社会制度全体の改革も必要ではないだろうか。