冷凍食品大手の加ト吉を、JTと日清食品が共同買収する方向が固まった。JTがまずTOBで加ト吉の全株式を取得、その後に49%を日清に譲渡し、JTが51%で経営権を握る。

 加ト吉の時価総額は700億円程度だが、プレミアム分を乗せて、株式取得総額は1000億円規模になる見込みという。

 加ト吉は、今春に不正な循環取引で売上を1000億円水増ししていた問題で、約170億円の損失を計上し信用を失墜させた。さらに6月にはミートホープ事件に関与しイメージダウンに追い討ち。悪化する業績と信頼の回復が急務とされていた。

 循環取引問題の引責で4月には創業社長の加藤義和氏が退任。資本提携により5%出資をしていたJT出身の金森哲治氏が社長昇格し、経営再建を進めていた。今回の買収は、その総仕上げとも言えるだろう。

 創業者の加藤氏は、社長退任後も大株主であったが、今回のM&Aにより持株を全て手放し、加ト吉から一切身を引くことになる。観音寺市の市長もやったことがある地元の名士で、攻めの経営姿勢で冷凍うどんやエビフライなどを成功させた。また、M&Aに非常に積極的で、業種に関係なく、様々な会社に投資していた。だが一方で、うまくいかない案件も少なくなく、京樽買収では真っ先に手を挙げ、当初再建にあたったが、結果的に吉野家に譲ることとなった。

JTにとっては
「同棲」した上での「結婚」

 JTは、7年前に加ト吉と資本提携しており、半年前からは社長を送り込んでいた。見方によっては、経営をしながらデューデリを行えたとも言える。買収先の内情がよくわかっている会社が買収する、というリーズナブルでリスクの低い買い物である。