今年の金融・為替市場は何かただ事では済まないかのような、不穏な幕開けとなった。ユーロ圏の債務不安が再燃か、原油価格の急落でロシアなど資源輸出国の経済危機発生か、減速する中国経済がハードランディングかなどなど、何かとリスクオフ機運が優勢になりがちだった。

 昨年8~10月、米国景気の回復力が再認識された。世界経済も上向いてリスクオン相場になるとの期待が強まり、ドル高円安が進行した。しかし、11月以降、米国以外の世界の成長が少しずつ下方修正され、巡航ペースを若干下回りそうな雲行きになった。

 そうなると、米国経済の「独り勝ち」が、世界の救いになるばかりではなく、バランス悪化の火種にも見えてくる。世界需要の伸び悩みで原油など資源価格は圧迫される。そこに強い米国経済を背景にドル高が際立つと、ドル建て表記の資源価格はそのドル高分さらに下落し、それが資源国・新興国を脆弱化させる。もっとも、世界情勢をそれほど悲観的とはみていない。

 市場で懸念される主要問題の多くは暗と明の両面が指摘可能だ。ユーロ圏の「暗」は、南欧債務問題は根本解決には程遠く、デフレ陥落リスクが続くこと。一方、「明」は数年前より問題債務の整理が進んで欧州金融機関が連鎖倒産するようなシステミックリスクが小さくなったことと、ECB(欧州中央銀行)がようやく積極対応し始めたことだ。